フィーディングレーンのこと(2)

真冬に友人たちと管理釣り場に出かけました。
渓流タイプではありますが、おきまりのいわゆる「ペッタリ」が何面かある場所でのこと。
友人の一人が、何面かある「ペッタリ」のうちの一ヶ所で、なにやら入れ食いモードに突入したようなので、自分ともう一人が見に行きました。数匹釣って飽きたというので交代。次も飽きて自分に交代。自分も飽きて最初に交代。2〜3匹づつですが、その繰り返し。他の場所ではそれほど釣れなかったので、いつものように「原因を究明」しようと、よくよく周囲を見回すと、他と同じ「ぺったり」のように思っていたそこの1面は、石積み(堰)と石積みの距離が他より短く、高低差が若干ありました。

もうおわかりかと思いますが、他の「ペッタリ」よりは流れが強いのです。しかもそこだけ表層に微妙に波が立ち、釣り人やラインの気配を消しているようです。魚の数は他の場所と比べ、偏光グラスで目を凝らして見ても変わりません。

そういう理由で釣れることがわかったので、今度は意図的に立ち位置を変えて釣って見ました。左右に1メートルほどずれると、釣れることは釣れますが、数は激減します。対岸に行き、同じポイントを狙ってみると、誰一人釣れません・・・・・

 

フィーディングレーン

テンカラを始めてしばらく経ったころ、山女魚の多い場所でのイブニング時に、下流側(自分の立っている場所は水面より低い位置)のサイドから、ライズしていた魚を確認しキャストをしていました。「バシャッ!」「掛かったーっ」「あれ?」スレてます。「バシャッ!」「また掛かった」「またスレだ〜」。今度は慎重に狙い「バシャッ!」「今度はやった!」「あらららら」またもやスレ。ここまではよくある話ですが、ふと不思議に思ったのが、スレはスレですが、全部魚の同じ側の同じ位置(横っ腹)に掛かっているのです。

これは何かある!と瞬時に思った私は、当時知り合ってそれ程経過はしていませんでしたが、師と仰ぐ、堀江渓愚さんに質問のメールをさせていただきました。「今度会った時に詳しくお話しします」ということで、早々にお会いし、お話しを伺ったところ・・・

 1)集中力(第一回)
2)テーマを決める(第二回)
3)自分中心から魚中心へ(第三回)
4)毛バリへのこだわりからの脱却(今回)


山女魚には 見向きもされぬ 我が毛バリ   毛鉤子


毛バリを作り、販売させていただいている自分がいうのもなんですが、今回は毛バリへのこだわりからの脱却というテーマでお話ししましょう。

テンカラをやっている初心者の方々から、決まったように、「毛バリは何をお使いですか」、「色は」、「形は」、「大きさは」、そして「どうやって作るのですか」と聞かれます。

まぁ最初は他に拠りどころもなく、「和式毛バリ釣り」というくらいで、どうしても「毛バリ」という名に振り回されてしまいがちなのも仕方がないのかもしれません。

「毛バリは一種類でいい」というベテランもいれば、「毛バリは何種類も使い分けた方がいい」というベテランもいる。これでは初心者は混乱してしまいます。混乱した挙句、「毛バリ、毛ばり、毛鉤、けばり」と、釣りというよりは毛バリの妄想に取り憑かれ、テンカラという釣りの、「釣り方」という大きなな部分を見失ってしまい、まさに「木を見て森を見ず」の状態になってしまいます。

ではなにゆえに、「毛バリは一種類」派と「毛バリは多種類」派がいるのでしょうか。

先ず「一種類で充分」という方も、そういう釣り方をしているだけで、実際には明るい色の毛バリに出なかったけれど、黒に変えたら入れ食いになったというような経験もしているはずで、もしも一種類で充分だとしたら、多種類の毛バリを使うのがあたりまえな、「フライフィッシング」など成立しなくなってしまいます。それでは、何でそのようなことをいいたいのかといえば、そういう方々は、ひとえに「テンカラという釣りの釣り方」の重要性を伝えたいからに他ならないからだと思います。

初心者の方々は、とにかく釣れなければ、「毛バリが悪い!」と思いがちです。そして釣り方の重要性も省みず、ひたすら毛バリのローテーションを繰り返す。魚のいないところにキャストしたり、就餌点をはずしていくら毛バリを流したところで、魚のいない室内プールで釣りをしているようなもので、キャストの練習くらいにはなるでしょうけれど、魚の釣れることはないと思います。

「毛バリにこだわらなくていいんですよ」、「自分の信じた毛バリを使いましょう」の裏には、「だからキッチリ魚の付き場を考えましょうよ」、「魚の口元に毛バリを運ぶように流しましょうよ」、「魚が食べられる状態に毛バリを流しさえすれば、何でも食うんですよ。だから毛バリは何でもいいっていってるんですよ」、ということを伝えようとしているのではないでしょうか。

次に、「毛バリ多種類派」の方々は、当然のことながらフライでいうところの「マッチング・ザ・ベイト」、すなわち、今現在魚が食べている餌に似ているものを使うということや、それとは逆に、あまり人の使わないものを使い、毛バリに慣れてしまった魚に、口を使わそうということなどを伝えようとしていると思います。しかしながらそれらの毛バリを使ったところで、やはり釣り方(アプローチ、キャスト、流し方、誘い方等々)ができていなければ魚が釣れることはなく、当然のことながらそれらの釣り方を踏まえた上での、「色々な毛バリを使って釣果を伸ばそう」ということに他ならないと思います。

どちらにしろ、先ずは「釣り方」が最優先で、それさえ正しければどんな毛バリでも魚は釣れるし、その釣り方を踏まえた上でローテーションをすれば、尚のこと釣れるのは自明の理だと思います。

今回のタイトルは、「毛バリに振り回されずに、先ずは釣り方から」という意味で、「毛バリへのこだわりからの脱却」と付けました。ただし本当に脱却すると、魚は釣れなくなってしまいます(笑)。
まぁこうやって書いている私自身も、「毛バリを見て釣りを見ず」ということにならないよう、常に心がけるようにしていますが。

 銘:明烏(金箔貼り)

追伸:毛バリ屋としてひとこといわせていただくならば、「毛バリ巻き」「タイイング」は、それ自体独立した趣味として成り立っていると思います(勝手にですが)。私事ですが、一時釣りにはピタリと行かず、タイイングだけしていた年なんてのもありました(本末転倒)。それも独立した趣味と考えれば納得できるかと(自分だけ)。
まぁ丁寧に巻いた毛ばりを、綺麗に並べた毛バリケースを見て、ニヤニヤしているのは私だけではないと思いますが・・・・・・・・・

 1)集中力(第一回)
2)テーマを決める(第二回)
3)自分中心から魚中心へ(今回)
4)毛バリへのこだわりからの脱却(第四回)

3)自分中心から魚中心へ
前二回はメンタル面を書きましたが、今回は実釣に関して少々書こうと思います。
偉そうに書いていますが、現在自分もこのテーマと格闘中です。

ある程度のキャストもできる、自然に流すことも誘いもできる、合わせもきいてきたのになぜかイマイチ釣果が伸びない。自分はこの段階でけっこう悩みましたが、名人上手の著書、諸先輩からのアドバイスやヒントを得て、「自分中心(主体)の釣りから魚中心(主体)の釣り」を考えるようになってから、少しずつではありますが釣果が上がってきたように思います。

そこでまたまた具体的に申しますと、管理釣り場にしろ有名河川にしろ、およそ多くの人が釣りに来ている場所では、自ずと「見るからによさげなポイント」を、先行者や誰かしらがたたいていると思っていいでしょう。しかし自分も「ここはよさそうだから」と、狙ってみることになります。よさそうなポイントで釣れないのに場所にハマると、「時間だけがむなしく過ぎていく」という結果が待っています。釣り座にしても同じことで、振込みのしにくい場所、キャストしても後ろに引っかかるような場所はみんなが敬遠し、自分も避けて通ることになります。
何がいいたいのかといえば、いわゆる「竿抜けのポイント」です。

ベテランの方などが普通に考えれば簡単なことも、自分が初心者だったころは、考えることもできませんでした。

魚の付き場がある程度わかってくると、人のやっていないポイントで、魚がいそうなポイントはいくらでもあることに気が付きました。だけどやりたくない。糸は引っ掛かり毛バリはなくなる。そこを落ち着いて、「仕掛けを短く詰めたり」「なるべく周囲に引っ掛からないようていねいにキャスト」(まぁこれにはキャスト練習も必要ですが)をしたりして、なんとかして釣ろうと思い、これは現在も練習中です。この「竿抜けを釣る」というのが、釣果アップのひとつの秘訣だと思います。自分の釣りやすさより魚の付き場。自分軸から魚軸へ。

もう一つはレーンとゾーンの問題です。フライフィッシングをしていて、「ドライフライしかやりません」という方がいます。これはこれでご自分のこだわりがあり、大いにけっこうなのですが、テンカラ初心者が、「こうあるべき」「こうじゃなきゃ」などと、余計なこだわりをもつのはどうかと思います。余計なこだわりは釣果アップの役には立ちません。それはある程度できるようになってから。
それこそ、「テンカラは十人十色でテンカラー」などと冗談でいうように、みなさんそれぞれのスタイルで楽しまれてよいのですが、それは色々な釣り方を試し、色々な釣り方で釣れるようになってからの、楽しみとして取っておいたらどうでしょうか。

水面と水面直下、見える毛バリを使って釣りをするのは楽しいものです。しかし魚の状況により水面付近ではピタリと食わなくなる時があります。こんな時、自分が水面と水面直下の釣りしかできなければ、「もうお手上げ」ということになってしまいます。自分の釣り方に魚の方に合わせてもらう。これが自分中心の釣り。
そこで、もしも毛バリを深く潜らせる釣りができるようになっていたらどうでしょう。魚の就餌点までなんとか毛バリを運んであげる。これなら水面で食わなかった魚も食うかもしれません。食うか食わないかわからないが、食わせるチャンスだけは確実に増えています。これが魚中心の釣り。
毛バリが見えなくても、ラインの引き込みなどの変化で合わせる練習をする。これが身についていれば、いわゆる平面(水面と水面直下)の釣りから立体(水深のあるところや底釣りなど)の釣りへと、自分の釣りの幅が増え、少しでも多くの釣果が見込まれると思います。

自分の釣り方に合った魚を釣って楽しむのはベテランになってから。
先ずは魚に合った釣り方で魚を釣ると、心がけてはいかがでしょうか。(1/Dec/09)

追伸:次はお待ちかね(待ってないか)の毛バリの話。ここまで一気に書いて少々疲れましたので、しばしのお待ちをお願い致します。
 

1)集中力(第一回)
2)テーマを決める(今回)
3)自分中心から魚中心へ(第三回)
4)毛バリへのこだわりからの脱却(第四回)

2)テーマを決める
今回は「テーマを決める」ということ。

サンデーアングラーの方々は、多忙な日常生活からの脱却とばかりに、「やっと釣りにきたぞーっ!」「オラオラ魚ども、やってやるぞーっ!」と、その釣りに行った「たった一日」に「なんでもかんでもあれもこれも」と、持てる道具と技術と知識をいっぺんにさらけ出し、たくさん釣れても釣れなくても「今日は何匹釣ったー」(満足、不満足にかかわらず)と、勢いだけで終わってしまうことが多々あります。それはそれで楽しくてよいのですが(不満足ならよくはないか)、もう一歩先を見て、「次はもう少し釣れるようになりたい」と思うのでしたら、「今日は何で釣れたのか」「今日はどうして釣れなかった」くらいは考えるようにしましょう。

そこで具体的にどうすればよいかというと、これも自分の場合ですが、「テーマを決める」ようにしています。

たとえば、「今日は10匹釣る」っていう単純なテーマでもかまいません。(尾数はご自分で決めてください)ただし(ここからが重要)「10匹をどう釣るか」を考えましょう。管理釣り場でしたら尚のこと、魚のストック量も多いので、テーマを決めて釣りをするにはもってこいです。淵での釣りをマスターする為に淵で10匹釣る(努力をする)。瀬だけで10匹頑張ってみる。水面で10匹釣る。小さいスポットだけを攻めて10匹。自然に流して10匹、誘って10匹、逆引きで10匹。毛バリを変えずに10匹。それこそいくらでもテーマはあります。そして、そのテーマで、10匹目標のところ3匹しか釣れなかったところで、何も考えずに3匹釣ったのとは大違いで、「何がよかったのか」「何が悪かったのか」「次は何をすればよいのか」と得るものは大きく、「次につながる釣り」をしたことになります。

竿の振り方にラインのテスト、毛ばりの検証から天候気温の変化に至るまで、「考えて釣るべき」ことは無限にあります。自分でテーマを考えて自分で検証し次につなげる。釣りはどうしても「引き出しを多く持っている人」の方が釣れます。自分テーマの検証で、自分の引き出しとその中身をどんどん増やし、上達への足がかりとしてみてはいかがでしょうか。(1/Dec/09)




 いつもこのような拙いブログではありますが、ご覧頂いてありがとうございます。吉田毛鉤の吉田です。

東京トラウトカントリーで、堀江総支配人よりテンカラ教室の依頼をうけてから、せっかくお越しいただいた生徒さんに、ただただ漠然と「テンカラ釣り」を教えていたのではと、自分自身で遺憾に思い、一度自分の中にあったバラバラになっていたものを、文字にしてまとめておこうと思いました。

初心者の方への参考に、過去の釣りから今現在に至った自分の釣りを見直す為に、そして自分自身もう一歩先へ進む為にも、精神論を含めて少し書いてみようと思います。

自称・テンカラ初級卒業をした程度の奴が、「な〜にいってんだよ」と、ベテランや名人上手の方々からお叱りを受けることも多々あると思いますが、そこはひとつ若造の戯言と一蹴し、目を瞑ってお許しいただければ助かります。

それでは前置きはこのあたりで、本題に入りましょう。

ステップアップの為のテンカラ講座(管理釣り場を利用して、初級から中級へ)
1)集中力
2)テーマを決める
3)自分中心から魚中心へ
4)毛バリへのこだわりからの脱却

長くなりそうなので四回に分けて書いていきます。

1)集中力
糸も結べる、ハリも結べる、竿も振ることができるようになり、なんとなく「合わせ」もきくようになり、魚の顔もチラホラと拝めるようになった方の、「次なるステップ」を踏み出す為に「集中力」のお話を。

ある程度魚の顔が見られるようになると、とにかく一分一秒でも釣りがしたい、毛バリを振り込みたい、チャンスがあれば何匹でもいいから釣りたい・・・と、とにかく魚を釣る(掛ける)ことに前のめりになりがちです。その結果は・・・・・。自分では一所懸命やっているつもりが集中力が途切れ、ポイントは見れないしキャストは甘くなる、自然に流せず誘いも雑になり、そこに魚が飛び出そうものなら、合わせがきかず頭に血が上り、興奮しているのは自分だけという悪循環が始まります。
こうなると、やればやるだけ疲れるだけで、釣果なんぞは期待のかけら程もなくなってしまいます。

そこでどうすればよいかというと、「意識的に休憩を取る」ということが必要になってきます。自分のペースが狂っているので、「疲れたから休む」「あと一匹釣れたら休む」式ではダメ。
私の場合ですが、とにかく時間で区切るようにしています。時報付きの腕時計を持って行き、「ピピピッ」と鳴ったら時計を見る。一時間ごとでも二時間ごとでも、自分で決めたスパンで休憩を入れるようにしています。たとえ入れ食いモードでも続けない(これは無理か)、いずれにしても釣りを一時中断するのは、それはそれでかなりな精神力が要りますが、やはり休憩を入れないと、魚が釣れないばかりではなく、疲れて足元がふらいついて転倒したり、果ては落水?なんてことにもなりかねません。自然渓流なら尚のこと。周囲に気が廻らなくなり、その他の色々な危険な事態に巻き込まれることもないとはいえないと思います。

特に毛バリを使った釣りは、「目」と「精神」が疲労します。意識して休むようにする。腰を落として空を見るとか、伸びをして深呼吸するとか。甘いものを口にする。ウエットティシューで顔を拭くなんてのも。お湯を沸かせる場所ならお茶やコーヒーを入れるなど。とにかく釣りをしながら休むのではなく、一時竿を置いて、釣りから放れて休みましょう。

集中力を取り戻す為には、休憩は絶対必要だと思います。(1/Dec/09)