三つ子の魂百までも
昨日は(も)群馬県にある管理釣り場に出かけた。
禁漁になってもテンカラをやりたいという、吉田毛鉤会メンバー女子2名を案内してきた。
一般渓流では禁漁期に釣りができないので魚や毛バリについての検証ができない、しかし、冬場でも冬眠しない魚たちは何かの餌を食べているわけで、管理釣り場ならそういったことを調べたり、観察することもできる。
真冬でもライズがあるし、水中で捕食モードに入っている元気な魚もいる。ただ、気を付けないとならないのが、この魚たちの生まれ育った氏素性を考えないとならない。
基本的に管理釣り場に放流されている魚たちは『養魚場』とか『養鱒場』と呼ばれているところで、親魚から採卵され、人工授精⇒孵化⇒ペレット(と呼ばれている練り餌を固めたもの)を与えられて育っている。しかも常に『人』が近くにいて『人の影』や『人の足音』に慣れて育っているわけだ。
昨日の管理釣り場の敷地内にある養魚池では、私たちが近くにいくと、飼いならされた池の鯉よろしくわらわらとニジマスやイワナが集まりながら寄ってきた。こんなことは自然界の魚ではありえないわけで(魚たちより大きな生き物は、その生き物に近づいたら自分たちが捕食の対象にされてしまう恐れがある)、通常は逃げるか隠れるかするわけだ。
このようにして育てられた魚たちが、管理釣り場の渓流に放され、そこの水になじんで、自然界の餌を食べるようになることはなるのだが、やはりその記憶のどこかにその魚の育った(育てられた)環境が残されているせいか、近づいても逃げないで平然としている魚が多い。
ここからが特に管理釣り場特有の話になるが、逃げないということはその頭上のみならず、自分が定位している流れの上下左右、ありとあらゆる方向から毛バリやルアーなどの疑似餌が通過したり流れてきたりすることになる。
自然渓ではラインやハリスや毛バリの影を見ただけで遁走する魚もいるが、比較的毛バリを選ばずに、餌だと思って口にする個体が多い。要するに魚との間合いを取り、魚にこちらの存在を気付かせることなく近づき、自分の影やラインの影で魚を脅かさないキャスティングをすれば、それほど毛バリを選ばず(とはいえサイズと色等はそれなりに考えないとならない)に毛バリを食ってくることが多いわけだ。
ただ、管理釣り場の魚の場合、毛バリやルアーという疑似餌を嫌というほど見ている(見させられている)ので、アプローチに気を使わないでよい反面、毛バリの種類、色、形、大きさ、そして自然に流すか誘いをかけてリアクションで食わせるか、どのような水深を流せば魚が反応するかを考えながら釣りをしなければならないのである。
こういったことを考え、自然渓では自然渓なりに、管理釣り場では管理釣り場なりの釣りをしなければ、なかなか思うような釣果に繋がらないということが理解できると思う。
特に管理釣り場でテンカラをおぼえた初心者を自然渓に連れていくと、アプローチで失敗することが多い。キャスティングの精度や飛距離が出ない分、どうしても魚に近づき過ぎて魚を蹴散らしてしまうわけだ。
反対に自然渓のみで釣りをして、いつもは普通に釣れている人が、冬場の管理釣り場で痛い目に合うこともある。いくら近づいても逃げないかわりに、水深に応じた毛バリ、毛バリの色やサイズ、ドラグやリアクションのかけ方等、小手先の技を次から次へと繰り出さないと釣果に恵まれなかったりする。
放流魚も天然魚も『三つ子の魂百までも』。
自分の釣り方に合った魚を釣るのではなく、魚に合った釣り方にこちらを変化させ釣りをする。
このようにして私はどうにか結果を出しているし、昨日同行の2名の女子も、手を変え品を変えしながらテンカラを楽しんでいた。
こんな話を含めてテンカラ教室を開催しているが、次回の予定『第81回・TTCテンカラ教室』は12月3日(土)。
その前に、初の平日開催となる『第68回・吉田毛鉤の毛バリ研究会』が11月24日(木)に開催となる。
関連教室の詳細とお申込みは【TOKYOトラウトカントリー・ホームページ】よりご確認ください。
吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 テンカラインストラクター 吉田孝