沢テンカラの小物たち
支流の支流、小渓流の源流域は植林地帯も少なくなり、広葉樹林が多く見られるようになる。
渓も深くて狭いところも多いので、日の当たらない場所も多く、周囲は湿気を含んだしっとりとした空気に包まれている。
古い倒木も岩も、過去の人工構築物でさえ苔につつまれ、開放的という言葉とは真逆の世界であるのだが、あの落ち着いた雰囲気をいつも私は「箱庭」や「坪庭」や「日本庭園」という言葉で表現している。
巨木や巨岩に圧倒される男性的な雰囲気の渓であれ、たおやかな女性的な雰囲気の渓であれ、標高の高い山岳渓流の中には実に美渓と呼べるところも多々あり、そういった美渓を数多く抱えているのが、私が足繁く通っている奥多摩の渓なのである。
もちろん私も日本全国の渓をくまなく回ったわけではないので、きっと各所に美渓というところはあるとは思うのだが、大都市圏からほど近く、日帰りでこういった渓を楽しめるところは数少ないのではと思うのだ。
むろん魚がうようよと泳いでるという場所ではない。
こういった渓では、渓を愉しみ、「一尾でも釣れればそれだけで嬉しい」と思うことのできる人でないと、その渓の本当の素顔を見ることはできないのではないのかと思うのだ。
そういった渓を愉しめる仲間と共に、私はいつも奥多摩の渓に入るわけだが、こういった場所に入る場合には、持ち込む道具もそれなりに制限しないとならないことになる。
林道や登山道が入渓までのアプローチにあるため、ある程度の歩きを覚悟しなければならない。直ぐに自分の車に戻れるところも少ない。
予備竿や食糧を始め、背中に担ぐ荷物は多くなってしまう。
しかも滝の直登、岩場のへつり、倒木や藪くぐりなどの障害物競走的要素もあるので、釣り道具も必然的に最小限となるわけである。
というわけで私の沢テンの小物の紹介になるが、最近はこんなチェストバッグに一式納め、その他の予備の道具類は、小さな防水スタッフバッグに入れてザックに入れている。
掃除を兼ねて中身をぶちまけてみたが、このようなものが入っている。
●ハリス各種に各サイズ、そしてテンカラライン。
吉田毛鉤プロデュースのテンカラライン「テンカラミディ」とともに、もちろんFUJINO製のものを愛用している。
私の場合は浮かせる毛バリに沈める毛バリ、ヤマメやイワナで釣り方を変えることがあるため、ハリスも各種必要になってくる。
●毛バリのケースも数多くは持ち込めないため、このメインのケースの他は小さいものを二つだけザックに入れてある。
箱ごとの紛失やひっくり返した時のために、ヒモと磁石をつけて被害を最小限にしようと思って加工したケースだ。
●こちらは老眼鏡と偏光グラス。先日の渓で紛失したと思っていた老眼鏡が、帰宅後掃除をしていたらザックの中から転がり出てきた。
1500円くらいだったと思うのだが、早朝の入渓直後の薄暗い沢では、これがないと毛バリにハリスを通す際に発狂しそうになるために、1年ほど前から必需品になってしまった。
明るくなるとある程度は見えるようになるので、その時点から偏光グラスに交換する。
私はメガネを掛けているので、老眼鏡も偏光グラスもメガネに取り付けるクリップオンタイプを使用している。
●左から、毛バリをケースから取り出す時やハリスが絡まった時などに重宝している先端がプラスティック製のピンセット。
●隣がペン型のハリ研ぎ用のヤスリ。根掛かりや頭上の木に掛かった後は必ずハリ先をチェックし、潰れていたらその場で研ぐ。
●フォーセップ(ハリハズシ)も小さなものを。
●そして水温計。私にとっては自分なりのデータを取り、次なる釣りへと繋げる最重要なアイテムでもある。
「竿より前に水温計」(を用意しましょう)
私が講師を勤めるTTCのテンカラ教室で、毎回ギャグのように言っている私の考えた標語である(笑)。
●ドライフライを使用したテンカラも状況に応じておこなうための、液状フロータントと粉末のフロータント。
粉末も白い粉を使うと真っ白になり過ぎてしまうので、私はグレー(黒)の粉を気に入って使っている。
●右端は「真実」を語るメジャー。これがあれば「釣り人に話をさせる時には両手を縛っておけ」と言われなくて済む(笑)。
●ちょっとしたものだが、このケースは使用した毛バリを納めておくケース。市販の小さなケースにドリルで穴を開けたものだ。
沢ではフライパッチのように身体の外側にむき出しで毛バリを付けておくようなものは不向きである。行動中になくなることが多過ぎる。
先日もランディングネットがなくなり無残にもケースだけが残っていた。
それ以降なるべく紛失しそうな恐れのあるものには、流れ(紛失)防止のヒモやらストラップを付けるようになった。
●他には忘れてはならないラインクリッパー(ハサミ)の類。
●そしてこちらもデータフィッシングには必要不可欠なストマックポンプを。
●ゴミ袋は色々使ってみたが、厚めのシールバッグ(ジップロック)が今のところ一番具合がよいようだ。
以前からバッグに入れておいて、何度か釣りに行っても使わないものは掃除の度に除外して、現在はこのような形になっている。
次の日曜もメンバーと三人で、どこぞの渓に入る予定である。
今回はどうしても試したいもの(足回り)があるので、今から楽しみである。
吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 夏の渓藪沢沢水蝉しぐれ 吉田孝
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