ハリ先の話

先日の奥多摩藪沢釣行で、病み上がりの上クマに遭遇し、心身共にワケワカラン状態になってしまったせいか昨日再度発熱し、一晩中身の置き所のないような状態で寝たり起きたりを繰り返し、あげく今日になったら全身の痛みもプラスされ、最低の状態に陥っている吉田です。あ〜しんど。

気を取り直しブログ記事を書くことにしましょう。

いさおさんと同行した藪沢釣行ですが
(いさおさんの記事はこちら)、その時に私の使用したハリは、先日千葉のGさんからいただいた「ジャガー」製の手研ぎのハリでした。



開始当初は別のハリを使用していて、魚の乗りが悪かったのでこちらのハリに交換したのですが、やはりいきなり掛りがよくなりました。

手研ぎのハリのバーブ(かえし)を削り、さらに研いだためゲイプ(フトコロ)からポイント(ハリ先)までが細くなっています。
ハリ先も切れっ切れになっているためカカリは抜群なのですが、その反面魚の口や根掛かりなどで、直ぐにハリ先が鈍ってしまいます。
通常のハリなら現場で簡単に研ぎ直せばどうにかなるのですが、丁寧に研いだものは家でじっくりとルーペを使って研ぎ直さないとどうにもなりません。

そこでちょっと怪しいと思ったら交換するのですが、正常なハリと先の鈍ったハリを写真撮影し比較してみました(私の肉眼では見えませんw)。



こちらは正常なハリ先です。

 

写真では細部まで写せませんでしたが、ルーペで確認しても問題はありません。



こちらが何尾か釣った後の毛バリです。



よく見るとハリ先が外側(写真では下側)にちょっと曲がっています。

この状態でも力強いアワセをすれば魚は乗ると思いますが、切れっ切れのハリのように、魚の自重だけで、向こうアワセで掛るようなことはないと思います。

う〜。写真撮影をしてブログを書くというここまでのことは、いつもなら日常のルーティーンワークとして全く問題なくこなせているのですが、さすがに体調不良だとキーボードを叩く指から背中にかけてが軋みだし、限界がきましたので今夜はこの辺で終了といたします。

いずれにしても魚が出ても乗らない方や、乗っても深く刺さらずに、バラシの多くなるような方は、常にハリ先の確認を怠らず、釣果アップに繋げていただきたいと思います。


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 飲んでもいないのに二日酔いのよう 吉田孝



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追悼釣行

青森県に赴任中の人間岩魚のいさおさんがGWに一時帰省するとのこと。
GWで人も多いかも知れませんが、「ご一緒に藪沢釣行をどうですか」とお誘いを受けた。
藪王の誘いを断る理由がなく、本日の午前4時、奥多摩で待ち合わせすることとなる。

実はこのいさおさん、堀江師匠から20年近く前にテンカラの手解きを受けたいわば弟子である。
かくいう私もフライマンくずれからテンカラの道に入るよう勧めていただいた弟子でもある。いさおさんには兄弟子として、失礼ではあるのだが「二人の不肖の弟子」として、今回は堀江師匠の好きだった奥多摩の渓への、追悼釣行にしようという話になった。



生前に伝えたかったが叶わなかった、私のプロデュースさせていただいたテンカララインの発売の報告も兼ね、自宅に保管してあった新品のカスタム32のグリップのセロハンをはがし、お供えするお花も用意し待ち合わせ場所へと向かった。



入渓点までは1時間半ほど歩くのだが、数日間発熱と咳込みで苦しんでいた病み上がりの身体に高度差100メートルのスイッチバックの道のりが重くのしかかかる。

動悸と咳込みが起こる都度「大丈夫なのだろうか」と不安がよぎるとともに、気道をかっ捌いて楽になりたいほどタンが絡む。
気道をかっ捌いてくれそうな奴にはこのブログのエンディングに出会うことになるのだが。

いさおさんも今期は初釣行。同じ年に生まれた二人のオッサンは、ヒーコラいいながらも入渓点に到着した。



いさおさんはスペシャル32を用意。
二人でテンカラミディを竿先のリリアンに取り付け、ハリスに毛バリも結んで空振りをする。
どういうわけだかこの竿たちとこのライン、本当に相性がいい。いさおさんも思わず笑っている。

「そういうもんだ」と一番ニヤニヤしているのは天空にいるあのお方なのだが、「イヒヒ」といたずらっ子のように笑う顔を二人して思い出してしまった。

渓で献花の後に心の中で追悼を。
お花は沢にお流しさせていただいた。



「さぁ師匠。今日は思う存分テンカラを振らせていただきますよ」とご挨拶の後、いさおさんと交互に釣り上がりを開始した。



いさおさんの竿にも私の竿にも、開始早々アタリがある。しかしちっとも魚が乗らない。
二人とも10回くらいアタリを感じ、1尾も乗らない不肖の弟子たち。
「まだまだだな」という声が、天から聞こえたような気がした(笑)。

魚の乗らない二人で顔を見合わせ、二人同時に口にした言葉が「師匠〜、もうこの辺で勘弁して下さい(泣)」



その直後、冗談のようだが私の竿がしなった。

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今回私はもう一つのやることをこの渓に持ってきていた。



それはこれ。

年に何度かお手紙をやりとりさせていただいき、いつもありがたいお言葉を頂戴している、紀州の竹株流トバシ、そう、あの「竹株渓遊」さんが行っているのと同じような渓魚の撮影をしたくて、即席で自製したアクリル水槽を持ってきたのだ。

氏はエクタクローム(ポジフィルム)で数千枚のアマゴの写真を水槽撮影し、その渓の魚の特徴などをデータとして保管されているのだが、ここ最近はやはり在来、しかも奥多摩の渓の魚に執着のある私も、氏の爪の垢程度でもよいので釣った在来の魚の写真を記録に残しておこうと思い、今回のような道具の製作に至ったのである。



先ずはテストなのだが、バックの色や光の加減で撮影は困難を極めた。

バックスクリーンを始め、ライティング、敷石のサイズ等、改めないといけないところが目白押しとなる。
まぁなんとなくの手ごたえは感じたので、次回からはもう少しマシな写真が撮れるとよいのだが。
もちろん私はポジフィルムなどではなく、安直にデジカメを使用した。



撮影に夢中になっているといさおさんも竿がしなり始めた。

釣っては撮影釣っては撮影で、こういったことをやっているのが好きな私だが、少々疲れが出てきたので、いつものYOSHIDA'S CAFEの時間となる。



今回は師匠の好きだったコーヒーを淹れた。
師匠にはインスタントで申し訳なかったのではあるが(陳謝)。



水槽撮影が難しく、あまりに酷いものが多いので、いつものように撮影したのもある。
そんな感じで釣りを終了としたのが午前10時半。

退渓して仕事道を辿り林道へと向かった・・・・・とここでは終われないトンデモナイ出来事が待ち受けていた。

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午前11時、標高850メートル。
陽光射す真昼間の日当たりのよい仕事道の、TOPを歩いていた私は足元に不穏なモノを発見した(フン)。
少々気にかかったのだが、そこから5メートルほど進み、20メートルほど先のブラインドコーナーに目をやると・・・・・

熊!!クマ!!くま!!

気道をかっ捌いてくれるかも知れない奴の正体なのだが、私は生まれて初めて遭遇した。

とりあえずこのブログが書けているということで二人は無事だった。

それと、こちらのアドレナリンが出まくったせいか、昨夜3時間しか寝ていない私が、いつもなら運転中に眠くなるハズが、自宅に戻るまで全く睡魔に襲われなかった。

まぁこの件に関しては、いずれどこかの誌面にでもと思っているので、その時に詳しく書いてみたい。

喉はからからでランチも食べたく、熊に出会った報告もあったのでいつものTTCに立ち寄り、「GW塩焼き班」としてTTCにお手伝いに見えていた、UさんとK隊長に横浜のNさん、そしてフライ教室に参加していたとくさんも含め、みなさんと談笑し帰途についた。



いや〜しかし驚いた。余韻が今も残っている。

追悼釣行とはいえ師匠!冗談にもほどがありますよ(笑)!!


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 笛の吹き過ぎで呼吸器ガタガタ 吉田孝 


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⇒クマ出没情報ブログ


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沢テンカラの魅力4(月刊つり人6月号)  

毎月25日発売になる月刊つり人ですが、今月もお仕事をいただきました。
以前もブログの記事として書いたことがあったと思いますが、生業と家庭と教室や取材などのプライベート以外のテンカラの合間をぬって、純粋に自分自身が楽しめるテンカラは、大物や数釣りにこだわらず、人工構築物のなるべく見えない美しい渓で、養殖された放流魚ではない魚を釣るということがあります。

そこで今回いただいたテンカラのお仕事なのですが、まさに「それ」というようなお仕事でした(超嬉)。



ここ3年の間に、動画やテレビのお仕事も含め、毛バリのタイイング(これは大好きなことですが)以外でのテンカラ関連のお仕事は、釣ったことのない魚を(異魚種等)を釣ったり、いったことのない渓流で(渓流魚を)釣ってくださいといわれたりしたことがほとんどでした。

これはこれで本当に自分の釣りの知識と技量を上げる、それこそトンデモナイくらい役に立った実にありがたいことなのですが、好きなこととやらねばならぬことは違います。



しかし今回の取材は、自分の中では記念すべきこと。
それは自分の大好きな場所、そして自分の好きな釣り方でお願いしますというお話しでしたので、本当に小躍りするくらいの嬉しい仕事になりましたね〜。



ここのコピーに書いてあることは、まさに私の心そのままでした。
家庭の事情で遠征も宿泊もままならず、年齢的にもムリはできない。しかし美しい場所できれいな魚が釣りたい。

今回はいつも吉田毛鉤会のメンバーも楽しんでいる、そんな近場のテンカラをご紹介することができて、本当によかったと思います。



そんな近場のテンカラですが、渓も小さく魚も決して多くはありません。
「自分は一尾だけだから」といっても、10人持ち帰れば10尾です。100人なら100尾です。
放流していない小河川で100尾持ち帰れば川は死んだも同然です。
放流していないこのような美しい渓では、どんな方がいついっても魚が釣れるよう、くれぐれも持ち帰りはやめていただき、キャッチアンドリリースにぜひともご協力していただきたいと思っています。

ひとりでも多くの方々に、こういった美しい場所で楽しいテンカラができることを紹介したのですが、それによって魚がいなくなるなどという、とんだ「仇」にならぬよう、会としてもキャッチアンドリリースをこれからも奨励していく所存であります。



昨日のブログにも書きましたが、ガツガツ釣りをするだけでなく、こういったお茶のひと時も渓の愉しみのひとつです。



今回はこんな記事も入れていただきました。
入渓者の多い場所でのスレたヤマメの対策方法です。



釣り人や登山者に脅かされ、姿は見れど出は早く食いの浅い奥多摩の電撃ヤマメ(笑)。
そんなヤマメに少しでも近づくための対策をご紹介させていただきました。

そんな記事と美しい写真は、ご購入の上ごゆっくりお読みいただければ幸いです(礼)。



この写真はどなたでしょう?
そうです、当会メンバーがひっきりなし(本当にひっきりなしに)に伺っている(笑)、上州屋狭山ヶ丘店の店長です。
誌面でもご紹介されていました通り、「特にテンカラに力を入れている」とのこと。
まさにその通りで、私が欲しいものは直ぐに取り寄せていただいたり、当会メンバーのいつも使用する消耗品等に至っても、常に切らさぬようお気遣いいただいていることもあり、本当にありがたいショップであると思っています。
なにより自宅から近いというのがありがたい理由なのですが(笑)。



もちろん私の教室を開催させていただいている、TOKYO TROUT COUNTRYもご紹介していただきました。

今回の取材では、下見にいっていただいた品川のK隊長(本日も奥多摩の渓で爆釣とのこと)と、同行していただいた秋山郷のUさんのご協力があっての成功となりましたこと、この場をお借りして御礼申し上げます(感謝)。
これからも会のメンバーのみなさまには、取材等で何かの折にご協力をお願いすることもあるかと思いますが、その節はどうぞよろしくお願いいたします。



今回ご紹介した、日帰りができて、美しい渓で美しい魚に出会うことができる渓。
しかもトラウトカントリーという基地があるため、仲間との情報交換もしやすいこの奥多摩エリア。
こういった環境を未来永劫残していきたいと思うのは、私だけではありません。

ゴミを捨てず、魚を持ち帰らず、いつまでもこの環境を残すことに、みなさまのご協力をお願い申し上げます。


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 テンカラインストラクター 吉田孝


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私の大好きな沢の記事は
沢テンカラの魅力
沢テンカラの魅力2
沢テンカラの魅力3
そして私の力作
とくじろうの春もお忘れなく(笑)


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沢テンカラの魅力3

私がテンカラのため沢(渓)に入る時に、どうしても欠かせないものがあります。
それは「お茶」や「コーヒー」を飲むための道具です。
まぁ湯沸しに必要なモノということですね。




渓は釣り場であると共に、私にとっては癒しの場所でもあり、日常生活のストレスのリセットの場所でもあるために、一杯の「お茶」、そしてそれを淹れるゆったりとした時間がどうしても欲しくなります。

元々キャンプなどの野外での生活は好きでしたので、何十年の間に溜まり込んだ道具類を処分や整理して、2〜3年前から新たなモノに買い替えを始めました。自分の趣向が沢でのテンカラに極端に傾いてきているために、買い替えている道具類も必然的にそっち系のモノが多くなってきています。

子供達が小さいという家庭の事情で、泊りでの釣りは取材の時くらいしかなく、ほとんどが日帰りの沢釣行になるため、煮炊きをすることは少ないために、同行の人数により上の写真の中のモノをチョイスして持っていきます。

真ん中のボンベとその下のストーブはイワタニ製ですが、日本でイワタニプリムスとして販売を開始した当初から、私的には信頼して使い(買い)続けているメーカーです。

左下はチタンコッヘル(3個)です。
その隣はめったにない宿泊の時に必要不可欠なハンドスキットル(フラスコ)とショットグラス。中には大好きなバーボンかラムを入れていきます。
お酒用に買った取っ手のないステンレスのダブル(保温)マグと、その隣が軽量なチタン製のダブルマグ。迷彩柄のカップ用きんちゃく袋は、キルティングの布で作った私のお手製です(笑)。
その右隣が最近購入したカップ麺のリフィルがドンピシャに納まる鍋兼用の小さいケトル。
そのまた隣のケトルは人数が数名になった時に持参します。
何か食べる時やコーヒーに入れたシュガーやクリームをかき回す時に金属同士が当たると嫌な感じなので、シリコンのスプーンとプラスチックの先割れスプーンも。

最近はこの中から人数と用途に応じて選び、右下の青いスタッフバッグに入れて持ってくようにしています。



単独の時はこれだけ。
湯沸しもコーヒー用のカップも全てこのチタンコッヘルで済ませます。とにかく軽いので。

私の場合はお茶を飲むためだけでなく、緊急時(ビバーク)のことも考え、簡単に使えるガス燃料のストーブだけははずすことができません。これはホントに愛用していますね。



お恥ずかしいのですが、生活感満載のこの写真。いつも沢でのテンカラから帰宅後、洗濯や道具を掃除してこのようにぶら下げたり干したりするのですが、量が増えるに従いカーテンレールが気の毒になってきました。
それとベランダへの出入りの際にいちいち荷物を移動しないといけないので、昨日洋服を掛けるブティックハンガーを買ってきて、そこに全て移動しました。



耐荷重は15キロ。キャスターも付いているので移動も楽々。
下部にはバッカンを二つ並べて置くことができます。



出かける頻度が多くなると(ここのところ週イチで沢に入っていました)、帰宅⇒洗濯と道具の清掃⇒そして乾燥⇒次の釣行となるため、どこかにキチンと片付けていたら面倒で仕方がありません。



というわけで、移動も楽で、なんでもかんでもぶら下げた収納に落ち着いている(ぶら下がっているのであまり落ち着かないのですが)私の愛する沢テンカラの道具たちでした。


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 早くも禁断症状が 吉田孝


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古い手研ぎのハリ

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これらのハリですが、この金額とこのパッケージからすると40年以上前のものだと思います。4本100円とか7本200円というのは、単価にして25円〜30円。
「手研」の表記がありますが、当時にしては相当な高級品だったと思われます。
(がまかつは子供の頃からなじみがありますが、ジャガーっていうのは知りませんでした)

昨日の研究会にご参加いただいた千葉のGさんからいただいたのですが(ありがとうございました)、早速ルーペでそのハリ先を確認後、もちろん実戦で使うためにバーブレス加工をしました。

 

エサ釣りのハリですので当然アイ(管・環とも)が付いていません。そこでチモトのミミの部分を少々削り、写真のように黒いナイロンの4号の糸でアイを取り付けました。



そんなハリには高級な材料を使いたいので、「剣羽根絹胴孔雀添」の毛バリに仕立てました。
こちらはヤマメバリの6号です。
海津バリのほうは、その形状から逆さ毛バリに仕立てるつもりです。

ここのところ、そのハリの形状と、掛かりとバレの関係を追求し過ぎて少々頭がおかしくなってきていますが、釣りをしていても考え過ぎて実に疲れてしまいますので、たまにはそういったことを考えずにテンカラをやりたいと思います(笑)。

GWは生業も普通にありますし、混雑具合を想像し、入渓したいのはやまやまですが、渓に入る予定は立てませんでした。
しかし東北赴任中の人間岩魚のいさおさんより「帰省するので奥多摩の渓にご一緒しませんか?」の強烈なラブコールをいただきましたので、やっぱり渓に入ることにしました。
いさおさんとご一緒だと、当然のことながら「藪」だと思いますので、超短竿(小柄2.4超超硬)を磨いて準備万端整えておきたいと思います(イワナ釣りたいイワナが)。

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さてさて昨日の帰路、横浜のNさんとお話をしていたのですが、昨年の黒部で見たことのない魚を釣りましたとのことで、Nさんから帰宅後にその魚の写真を送っていただきました。



尾鰭の大きいみごとなシェイプの魚です。確かに自分もこんな魚は釣ったことがありません。
おそらくですが、無班の銀毛イワナかと思いますが、珍しい魚ですね。

それと、魚の写真もそうなのですが、Nさんよりいただいた他の写真の質がかなりよいと思い、デジイチを所持していないハズなので、どんな機種で撮影したのか伺ったところ、「キャノン製パワーショットG12」とのこと(驚)。

当時のキャノン製コンデジではフラッグシップモデルだと思いますが(現在はG15もアリ)、デジイチと比べたらその重量(軽量)は、フィールドに持ち出すには魅力的でもありますね。
防水だったら即買いしそうでしたが、いずれにせよちょっと欲しくなってしまいました(アハハ)。

話は戻りGW入りした今週末も、人間岩魚のいさおさんと藪沢に入る予定になりました。
人間岩魚もいいのですが、本当にイワナが釣りたい今日この頃です(笑)。


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 春なのに 寒の戻りだ 北風だ 吉田孝



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第30回吉田毛鉤の毛バリ研究会

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なんだかんだと30回を迎えた「吉田毛鉤の毛バリ研究会」。

ご参加いただく方からいただいた「お題」にお答えする形で、全くわからない方にご参加いただいた時には、「ハリ学」の基本から基本の「タイイング」までをお話しさせていただいています。



本日は寒の戻りだったようで、奥多摩でも一時雨が霰(あられ)になりました。



そんな中、本日も朝から続々とお集まりいただきました参加者のみなさま。



最近は研究会というより、テンカラネタ系演芸場という雰囲気が濃厚にただよい、



楽屋オチのような爆笑談笑会になっていますことをお許しいただきたいと思います(笑)。



午前8時にはTTC2階の多目的スペース(通称座敷)にお集まりいただきましたが、参加予定者の内のひとりがまだ来ていません。

そうです、先日の釣行記(とくじろうの春)で主役を演じた「とくじろうさん」です。



そうこうしているうちに、「オッ、来た!!」。



沢テンデビュー、「無事釣れてよかったですね〜」と、みなさんから祝福の声が。

 

拍手と笑顔で迎えられました。



釣れなかった時のタイトルに、「とくじろうの冬」というのを考えていたことは内緒にしておきます(笑)。



雑木姫さんと千葉のGさん。
雑木姫さん、スレッド=ダビング材ではありませんのでよろしくどうぞ(大笑)。



TTさんと万年新人のSさん。
Sさんには、いつも奥様の手作りのお菓子の差し入れをいただきましてありがとうございます。



Uさん、先日の取材にはお付き合いいただきまして感謝いたします。
ぺたうろさんも本日も色々と撮影をごくろうさまでした。



MKさんには、何故に私(達)が写真撮影にハマるのかがご理解いただけたと思います。
Nさんも金曜日から連泊での釣行と研究会、ご苦労様でした。



王妃も風雪の小菅〜奥多摩での週末。おつかれさまでした。
寒い雨の中釣りに熱中し、室内の写真には写っていませんが、運転手さんもおつかれさまでした(笑)。
くりぼうさんもいつもご参加ありがとうございます。



とくじろうさんは「イワナ」向けの毛バリを作っているのでしょうか。
インパクトのある初沢釣行でしたので、そりゃまた「イワナ」を釣りたいですよね。



今回はよき指導者の下、安全第一に沢テンカラをおこなうことができましたが、今日もよき指導者が背後に座っていました。



前門の虎ならぬ後門の狼。



気を抜いていると「檄」が飛んできますので気をつけましょう(爆)。



きょ→じさんにはDVDと渓流誌に「サイン」をお願いされまして、内輪ネタですが、渓流誌のサインスペースのページの真実をお話しさせていただきました(汗)。

くりぼうさんと、今回の研究会には初参加の飯能のIさんからは、剣羽根ゼンマイ胴の詳しい巻き方のリクエストをいただきましたので、そのご説明をさせていただきました。

他には同じハリを使用して、毛バリの大きさを変えて巻く方法や、ハリの研ぎ方や磨き方のご説明もさせていただきました。



こちらの2枚の毛バリの写真ですが、ライティングの調整前と調整後の写真です。



MKさんが食いついていましたので、変化をご理解いただくために掲載してみました。



そして同じハリ(管付きテンカラ7号)に巻いた2本の毛バリ。
写真ではイマイチわかり辛いのですが、実物を見るとかなり大きさに差が出ています。

このような感じで無事30回目を迎えた毛バリ研究会ですが、今後も引き続き楽しくてためになるお話をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 テンカラインストラクター 吉田孝


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メンバー向け追伸ですが、先日はマイナス10度にもなったという滞在先から無事お戻りになられた甘いコーヒーさん。



キレイなイワナの写真をお送りいただきました。ご報告ありがとうございました。

そして東北赴任中のいさおさんからはメールをいただきました。
ゴールデンウイーク中、こちらに帰省した折には奥多摩の沢にご一緒にとのこと。
こちらは追ってお返事差し上げますので、よろしくお願いいたします。


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沢テンカラの魅力2

先日は「とくじろうの春」という表題で、沢テンデビューの顛末記を書きましたが、本日は自分の話です。

 

テンカラ関連のお仕事をいただいた時、その時はこちらはテンカラの職人に変身し、いわれるがままにいわれた場所で、自分の持てる力を全て出して魚を出すのが仕事になりますが、シーズン中に自分自身がプライベートでテンカラをおこなうとなれば、数や大きさにこだわらず、「美渓の美魚」に会うことが一番の目的となりますので、奥多摩の渓に入ることが多くなります。

入渓するところは登山もする場所でもあるため、それなりの危険が伴います。
しかも本日は単独行。先ずは朝4時半に奥多摩駅前で入山届を提出しました。

テンカラという釣りを通じ、同好の仲間と会を作ったわけですが、会もそれなりに成長したこともあり、ただ釣りだけをやっていればいいというものでもないと思い、ゴミ拾いのボランティア活動を始めました。
こういった届の提出なども、会の責任者としては、率先してやらねばならないことだと思っています。

何かあってはならないのですが、万が一そういったことが起こった場合も、その問題が最小限になるように最大限の努力をしておかないといけないことは、大人としての最低限の責任だと思います。

品川のK隊長にやってもらっている「沢講習」などもその一環としていますが、新メンバーも続々と増えたこともあり、これからも「安全第一」で楽しめるテンカラをおこなうために、こういった講習も随時開催していこうと思っています。



話はそれましたが、本日も藪沢のべっぴんさんに会いにいくことにしました。
いくらこちらが会いたくても、向こうの気持ちもあります。
しかし本日は相思相愛となりまして、無事に逢瀬を楽しむことができました。



ただし本日は気温も低く、虫も飛んでいなかったため少々苦戦を強いられました。
結論からいえば3時間で3ヒットで2尾キャッチ(もちろんリリースですが)となりました。
奥多摩の沢なら平均的な感じです(笑)。
(ちなみにUさん、魚が出たのは例の区間だけでした)



今日は雨の予報も出ていたため、デジイチを持たずコンデジ持参でいったのですが、私の場合はコンデジの時でもこの写真の左側の「レフ板」を持っていくようにしています。
こいつがひとつあるだけで、魚の写真が美しくなります。
右のネットと同じようにたためるのがなんだか可笑しいですね。



すぐ上のヤマメの写真は、3枚上の写真のヤマメと同じ魚です。
「角度」「構図」「ライティング(レフ板で)」を考えれば、同じ魚でもこれだけ迫力のある魚に見えます。しかもコンデジで。
偉そうなことをいっているわりには、鼻っツラが光ってしまったのはご容赦を(笑)。




こちらのオチビちゃんは17〜8センチのヤマメです。
この付近の川特有の、お腹のダルメシアン模様がカワイイです。

よく沢の魚は銀化しないといわれますが、ある程度の大きさになっても、パーマークの発色がよく、ヌメリが多いのが沢の魚の特徴だといえるでしょう。
魚を手にした時に感じるあのヌメリ。ホントに艶っぽいです。色気がありますな〜この壇蜜ヤマメ。



そんな壇蜜ヤマメには、それなりの毛バリがお似合いかと思い、これまた素敵な毛バリを携えていきました。
気にいってもらえた「剣羽根絹胴孔雀添」。
絹擦れの音こそしませんが、3尾ともこの毛バリに出てくれました。

この毛バリ、今はまぼろしになった管付ヤマメの6号で巻いたものです。
(7・8・9号は再生産してもらい大量入手できましたが、6号はないんだよね〜)



今日は午前中のみ、実釣3時間の沢テンとなりました。
明日の研究会もあるために、早々に引きあげTTCに。



それにしても、こんなところを上がったり下りたりと、べっぴんさんに会うのには、実に体力も使います。
いつもは水深があって通りたくない場所は登山道を使い大きく巻いていくのですが、今日は思い切っていけるところまでいってみました。
ネットとペットボトルホルダーのついたベルトをはずして肩から掛け、ズボンのポケットのものは全て上着のポケットに移動させ、その上着をたくし上げて突進しました。
水温7度で腰まで水に浸かるのも、中々オツなものでしたね(泣)。



それでも会いたい藪沢の美魚。
来週末からゴールデンウイークが始まるので、喧騒を嫌いその前に出かけてきたのですが、帰路の登山道では登山客の多さに圧倒されました。



登山者が上がってくる時間に、ひとり逆走(下り)しているヘルメットを被りゲーターを付け、腰まで水浸しのオッサン。
色とりどりのコスチュームを着けた山ガール達が(中にはコスチュームだけでとてもガールとは思えない方も)変態を見るような目つきながら「こんにちわ〜」とすれ違う。
こちら(下り)は一人、向こう(上り)は百人以上の登山者に挨拶を交わし、ぐったりしながら車に戻りました。



少々寒かったのですが、美渓で美魚に会えた日。

美しい花も咲き、テンカラシーズンはそろそろ最盛期になるようです。


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 卯月来て なまめかしいのは 渓の女(ひと) 吉田孝


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沢テンカラの魅力

今月の頭に、25日に発売となる「月刊つり人」の取材に、吉田毛鉤会メンバーの秋山郷のUさんと奥多摩の沢に入りました。
その最終原稿が確認のため送られてきましたが、いや〜嬉しいです。写真も含め実にいい記事になっていました。
ここ数年の間、色々な場所に色々な魚を求め、連載を含めるとけっこうな数のテンカラ取材をこなしてきたのですが、いつもは取材地に連れて行かれ、ここで釣ってくださいといわれることがほとんどでした。
しかし今回は正真正銘、自分の好きな場所で、気心の知れた仲間と、好きな釣り方で、しかも自分でプロデュースして完成したばかりのテンカラライン「ミディ」での取材という、気分を下げろといわれてもムリなくらい、楽しい仕事をさせていただくことができたこともありましたので、いい記事になったのだと思います。

「吉田流奥多摩スレヤマメの対策」
もカコミ記事にしていただきました。これも個人的にはかなり押せる記事になっていましたね〜。

非常にいい取材をしていただいたと思う今回の記事です。特に奥多摩の沢テンファンのみなさまには、発売になりましたらぜひともご一読していただきたく、よろしくお願い申し上げます。

大好きな沢でのテンカラ。今月発売になる「つり人」誌面以外でも、
とくじろうの春
とくじろうの春(第二回)
とくじろうの春(第三回)
をお読みいただければ、その魅力の一部をご理解いただけると思うのですが、もうひとつ忘れてはならないものに、堀江師匠の著書の「風のテンカラ師」があります。
この中にある表題の「風のテンカラ師」「奥多摩、私の場合」もご一緒にお読みいただければ、沢でのテンカラの魅力を存分に味わっていただくことができると思います。

そんなショートレンジの釣りにはピッタリなラインのテンカラミディですが、私の場合最短では3メートル、竿の長さに合わせそれぞれ長さを調整し、各長さごとにこのように収納しています。



このYAMAWAの速攻スプールという仕掛け巻き、以前から使っていてミディにピッタリなこともあり、昨日追加で購入してきたのですが、手前のケースに各4枚の仕掛け巻きがこれまたドンピシャで納まります。



このケースは100円ショップの我らがダイソーで見つけたコインケースです。
しかも誂えたかのように、大きさだけでなく仕掛け巻きの色に合わせた3色がありました(笑)。
これで長さ別に12本のライン(多過ぎw)をコンパクトに持ち運ぶことができるので実にありがたいです。



テーパー形状が壊れないよう、太いほうを切ってこの写真のように加工し直しています。
二つに折り曲げて、スレッドやナイロンハリスで巻いて、ウィップフィニッシュ(もちろん手でおこないますが)してから、瞬間接着剤で固定しています。
強度があればスレッドは何でも一緒ですが、見た目的にはナイロンハリスで加工するのが、小さくキレイに仕上がるようです。

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さてさて今度の日曜日(21日)吉田毛鉤の毛バリ研究会の開催日です。
先日のとくさんの顛末記も含めた、楽しい会話と実戦的毛バリ巻きの研究会。
今回もご参加いただける方は、どうぞよろしくお願いいたします。

週末の日曜日は雨模様。その日は研究会でじっくり毛バリ談義といたしまして、土曜日はどこぞの渓にでも入ろうかと思っています。


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 テンカラインストラクター 吉田孝


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とくじろうの春外伝




いつもの書きっ散らかすブログに戻りますが、先日の「とくじろうの春」の釣行時、とくさんご自身が撮影された写真を、ご本人から送っていただきました。

本編と合わせてご覧いただいた時に、より臨場感が出るよう、写真にキャプションを入れてみました。

 

渓は絵になる場所が多く、コンデジでなくてデジイチを持参したくなることが多いのですが、趣味の荷物が多くなればそれだけ危険度も増すわけで、みなさんもご自身の体力や遡行技術、入渓する場所等をしっかりと考慮し、持っていくものを考え入渓していただきたいと思います。



ちなみに私の場合は「釣り優先」か「渓優先」かを分け、釣りに集中したい時にはデジイチは持っていきません。もちろんヤバそうな場所がある渓にいく時も。
魚を探すことに夢中になり、ドボンなどすると元も子もないので、防水コンデジを持っていくようにしています。

渓そのものを愉しみたい時には心に余裕があり、釣りをしていても1尾釣れたらラッキーという心づもりでいくことが多いため、のんびりと遡行しています。
そんな時にはデジイチ持参で写真撮影も渓の楽しみのひとつととしていますね。



魚を釣って持ち帰る。
このことには食欲だけではなく、自分で釣った獲物を誰かに見せたい、家族に自慢したいなどという気持ちもあると思います。
家族が喜び、丁寧に調理していただけば魚もうかばれるかと思いますが、誰かに見せたい、自慢したいという目的だけで、雑に扱われた魚などは気の毒でなりません。
ましてやこの写真の渓のように、放流はされていない、自然再生だけしかしていない渓などでは、寄ってたかってエサ釣りなどで小さい魚まで抜かれ、持って帰られたらひとたまりもありません。

そんな自慢がしたいなら、写真に撮ればいいのです。
その時の状況から雰囲気まで、自分のこともついでに写せば、自分史の一部にもなります。
もっとやりたいならブログでも立ち上げれば、それそのものが釣り日記にもなってくれます。
魚を減らすことなく、みんなに自慢したり、それをネタに盛り上がったり。

わざわざ買わなくても、今は携帯やスマホにもいいカメラ機能がついています。
どうぞみなさんカメラを持ち、渓でのことを想い出に残してみてはいかがでしょう。



この日、実は嫌な光景に二度出会いました。魚の話ではありませんが、ゴミの話です。

一度は沢での焚火跡に、カップ麺と焼酎の缶がそのまま放置されていました。
もちろんゴミは拾ってザックに下げて帰ってきました。

そして一日の釣りを終え林道を歩いていると、今度は長靴を履いた三人組の釣り師が、林道を歩きながらスーパーの袋をポイ捨てしました。
後ろから見ていたので、隊長がどやしにいきました。
一人は60年配です。そういった年齢までいっているなら、常識的に考えたら逆に注意するくらいだと思うのですがね。
魚はキープするはゴミは捨てるは。やらずぼったくりとはこのことです。
こういったことを取り締まる術は私たちにはありません。啓蒙活動しかやりようがないのです。
しかし心の憂さが晴れないので、そんな時にはいつも「こういった行為は神が見ている」「こういうことをやる奴らには必ずや天罰が当たる」と思い、自分の気持ちを落ち着かせています。

昨年は、いつもみんなが楽しませてもらっている奥多摩の渓の清掃に行きました。
せっかく作った会です。大したことはできませんが、今後もなにかのお役に立つことができればと思っているところです。



それにしてもせっかくの楽しい釣行が台無しになる、目に入るバカどもの行為。こういうバカ野郎は、本当に渓に来ないでいただきたいです。

いつの世も、どんな世界でもこいう奴はいるものですが、ホント・・・神様は見ていますよ!!!


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 天罰覿面たちどころ 吉田孝  



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とくじろうの春(第三話・最終回)

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痛恨のバラシ。というか、ハリスを切られ毛バリを魚に持っていかれてしまったとくじろう。
天を仰ぐか地にひれ伏すか。茫然と立ち尽くす春の渓には日が射していて、自分の気持ちとは裏腹にマッタリとした空気が流れていた。



先回りしていた代表が、高い所から魚の群れを見つけた。
上からの指示でその魚を狙うが、見向きもされなかった。
その後も坦々と、本当に坦々と竿を振るが、自分の毛バリに出てくれるような魚はいない。
何度も心が折れそうになるが、二人の目線が気になる、というより自分に釣らせようとしている二人の熱意を背中にひしひしと感じるので、がんばって竿を振り続けた。

入渓し、釣りを開始してから5時間近くが経過した。
左岸から流れ込んでいる一本の沢を見た隊長が、魚がいるかどうか様子をみてくると言ってその沢に上っていった。
まもなく隊長のホイッスルの音が聞こえた。その姿が見える場所までいくと、手には魚が。 



「おそらく魚はそこそこいると思うので、こちらの沢を釣り上がりましょう」「ただし距離は短いので、退渓点までいったら今日の釣りは終了になります」とのことだった。

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その沢は今までとはまた違った渓相で、階段状になっていて、畳半畳から二畳分くらいの大きさの落ち込みが続いていた。
毛バリを打っては落ち込みを乗り越え、また打っては乗り越えの繰り返しだ。
気力だけでなく、体力ももう余力があまり残っていない。
このままだと釣れずに終わってしまいそうだという、嫌な考えが頭をよぎる。

ひと息ついて天を見上げると真っ青な空があった。
自分の心境とはほど遠い、天高く突き抜ける真っ青な空。そしてその視野の片隅に、今日の退渓点となる林道が間近に迫っていた。

「もう少しで今日は終わりですが、この上に、後一つだけ魚の付いてそうな落ち込みがあるので、最後にとくさんにやってもらいましょう」と、隊長から話があった。

「馬手に隊長、弓手に代表」。鶴翼の陣を無理やり組まされたようなとくじろう。まさに抜き差しならないこの状況に、額に脂汗がにじんできた。

三人共に背中からザックを下し、落ち込みから少し引いた位置で木化け石化けしてその流れを見ていると、何尾かの魚がクルージングし始めた。
ドキドキするとくじろう。しかもそこにいる魚は流下してくる虫をめがけ、時々ライズをしている。
「ドキドキドキドキ」と高まる心音。
「ああいうヤル気のある魚は獲れる魚ですよ」と代表からも声がかかる。

後がない。この場所で魚を釣ることができなかったら、奥多摩の沢でのデビュー戦はみごとに敗退となってしまうのだ。しかも今日の一日のことを考えたら、それこそ立ち直れないくらいな心境のままでの敗退になってしまうのだ。

「とくじろう背水の陣」

笑える状況ではないのだが、後ろに水がある場所なので、本当に背水の陣になっている。
そして右と左からああだこうだともの凄いアドバイスもある。アドバイスというより罵声に近い。
それもなんとしてでも魚を釣ってもらいたいという、二人のガイドからの情熱の罵声なのだ。

じっくりと仕掛けを作り直し、この一投のためだけに集中する。
これで最後だ、最後のチャンスなのだと思うと、今まで以上に緊張が高まってしまう。

「よし!」

本当はちっともよくはないのだが、心を奮い立たせて毛バリを振り込んだ・・・・・つもりが痛恨のミスキャスト。
しかも付近の枝に仕掛けを引っかけてしまった。

檄を飛ばされ仕切り直す。

「もうどうにでもなれ!」

半ば本気で、半ばヤケクソ気味にキャストすると、毛バリがいい場所に入った!(らしい)。
本人はよくわからないのだが、「おっ!いい場所に落ちた!」と代表の声が聞こえる。

水面を流れる毛バリの行方を、鷹の目のようになった三人の視線が追う。

ガポッ!!

「@$%!&#〜!」

「%#@&%〜$*%$&@¥〜!!!」

「@%*!&〜$!%#!〜@*!」

三人三様わけのわからない雄叫びを上げていた。

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後で冷静に考えると、

「ウワッ!出たっ!」ととくじろう。

「何でもいいから陸地に上げろ〜!!!」と代表。

「ネット!ネット!ネット!ネット!」と自分のネットを出してサポートに入る隊長。

ということだったようだ。

延長戦の末のVゴール。逆転満塁ホームラン。

三人とも腰が抜けた。暫くは言葉が出なかった。腰が抜けて言葉も出なかったが、張りつめていた緊張が解け、三人の心はその時の青い空のように、スッキリと晴れやかになっていった。

指先の震えがいつまでも止まらないとくじろう。しかし嬉しい!そしてなによりもありがたい。



釣った魚は黄金色に輝くみごとなイワナだった。



今日一日の苦労を考えると、このイワナは特に光って見えた。
特に光って見えたのは、自分の目ににじむ「泪」という名のフィルターのせいかも知れないが。

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いつも話を聞かされていた「美渓の美魚」の話。


そういうことなのか。


魚の大きさや数釣りとは無縁の世界。


そういうことなのか。


何時間も歩き、冷たい沢水を被り、落石や滑落の危険や熊や蜂などに怯えながらも、一尾の魚に会いたくて渓に入る人達。


そういうことなのか。


釣れたらコーヒーで祝杯を上げようと、代表が持参したコーヒーをその場でいただいた。


そういうことなのか。


なんだか全ての事柄が、この一瞬で理解できたような気がした。



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とくじろうは釣った魚を水に放った。

イワナは気持ちよさそうに泳いでいった。

そのイワナがちょっと微笑んでくれたように思えた。

とくじろうに春がきた。

そしてまた渓にいこうと思った。


(完)


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