続けているテンカラ教室にご参加いただいた方々から、源流釣行にいきたいという話をよく伺うので、備忘録も兼ねて解説してみようと思う。
とても1度では書ききれないので、機会があれば続きを書こうと思っている。
源流釣行の装備(1)
(あくまで私の場合。基本的に日帰り単独行の説明になる。クライミングの要素の強い場所には行かないので、それらの場所に必要な用具類は省く。釣具一式は、釣り場に釣り方、ひとそれぞれ違い過ぎるので別の機会に)
★装備
●頭と足(回り)
ひどい滑落をしたらアウト(命)なので、ヘルメット不要の方はご自由に…、私の場合はつまらない場所でのちょっとした転倒や、枝やオーバーハングした岩の下を潜った時の擦り傷等の怪我を防ぐため、単独行の場合は着用するようになった(怪我して動けなくなった時、救助を呼びにいってくれる人がいない)。
何より少しの雨なら防ぐことができるのと、帽子と違い頭に密着しても蒸れず、快適さも含めて愛用している。
シーズン中、3月の寒い時期以外はウェットウェーディングだ。
沢靴とネオプレンソックスかウールのソックス、スネ当てのゲーターの組み合わせがほとんど。
水の汚い場所ではヒップブーツやウェーダーを着用する場合もあるが、基本的には源流域は足元の不安定な場所だらけなので、寒い時期以外上記のものはオススメできない。
沢靴のソールはフェルト派。
ラバーソールはスリップする時「ズルズル」ではなく、「ストン!」と一気にくるので、コケた時の衝撃がかい大きい。
それが理由で何度か小さな怪我をして以来、「苔の少ない沢へのアプローチが舗装路を長時間歩く」以外では使わなくなった。
フェルトソールで滑りそうな場所を想定して「脱着式のチェーンスパイク」を持っていく場合もある。
手袋は必携。
入渓退渓時の泥壁や草付きの上がり下がり、ちょっと手を付いた時の掌の怪我防止、もちろん防寒対策にも。
(春と秋の装備)
●ロープとスリング
ガチャガチャ(登攀用具)は使わないとはいえ、緊急時、例えばちょっとした高い場所にうっかり上り(ホントはうっかりはダメ)、下りるのに危険を感じた場合にロープを使う場合もある。
場所に応じて10メートルから20メートルを持参している。
スリングは自己確保(セルフビレイ)用に(初心者の同行者がいる場合はその人の分も含めて。120もしくは180センチ)。
カラビナも数枚持参している。
(ロープとスリング、カラビナ各種)
●浄水器
飲料水はとにかく重いため、できれば持参したくない。
登山ではなく源流釣りなので、基本的に綺麗な水はふんだんにある。
さすがに原虫類や細菌類の心配があるため生では飲まないが、煮沸もしくは浄水器を通せば大丈夫だ。
以前はボトルタイプのものを使っていたが、最近は写真のものを愛用している。
折りたたみ式の水筒とセットにしても軽量なのでありがたい。
(ソーヤーの浄水器、軽い)
●クマ対策
爆竹は破壊的な音響だが一瞬で終わる。
なので最近は100円ショップで買ったおもちゃのピストルを使用している。
クマ学者の提唱する「クマよけで一番効果のあるものはスプレー」。
ここ最近は里まで平気で下りてくるヤツもいるので、クマ対策は絶対にやった方がよい。
私も何度か目撃し、書籍にエッセイとして書いたことがあるが、ホイッスルは緊急時や仲間との合図にも使うので必携である。
(ホイッスルはクマ対策だけでなく、緊急時にも使う)
●地図とコンパス、GPS
スマホの山地図アプリは使わない派。
スマホには山や釣りに関係のない、日常生活で必要な重要なデータも入っているため、紛失や落下、破損が嫌なので、財布と一緒で下山するまでザックから出すことはない。
写真撮影には一眼レフを持っていくため、スマホでは撮らない。
GPSもハンディを持っていくが、電化製品は信用ならないため(電池切れ、破損)、バックアップとして紙の地図とコンパスを持っていく。
ちなみに保険として、登山者にはおなじみの「ココヘリ」(検索すれば直ぐに出てくる)も持って入渓している。
(ファーストエイドキットの中身はいずれ詳しく)
●ファーストエイド(エマージェンシー)キット
怪我をして動けなくなっても、1日2日はその場で何とかしのげるだけのものがキットには入っている。
(薬品各種、テーピング用テープ、ポイズンリムーバー、ツェルト、保温用アルミシート、ライト、着火用品、裁縫用具、細引き、塩、砂糖等)
食事の道具やレインギア等まだまだ持参するものはあるのだが、とにもかくにも事故や遭難を想定した時に何が必要かを考えてみれば持っていかねばならないものは何なのかがわかる。
それらをコンパクトにまとめ、日帰り釣行の場合で30リッターのザック(私は防水ザックが好み)に入れている。
源流釣行には必要なものが多い。
ザックも余裕があった方がよい。
何より必要なものは、健康な身体と知識だ。
知識は登山や沢登りの書籍やWEBから得られるし、登山の学校に通えば色々と覚えられる(私も一昨年、懸垂下降の教室から登山と医学の教室等にいくつか参加してみた)。
しかし健康な身体と体力だけは自分自身で努力する他ない。
不慮の事故は仕方がないとして、持病があったりして、それが理由で渓で具合が悪くなれば、単独なら死の確立も高くなる。
複数の場合は同行者に迷惑をかけることになる。
走るのが大嫌いな私も源流釣りを続けたいために、週に最低2回、各5キロのランニングを欠かさないようにしている。
源流釣行は本当に楽しい、しかし危険とはいつも隣合わせだ。
装備と知識と体力を持ち、これからもこの楽しい遊びを続けていくつもりだ。
吉田毛鉤 テンカラインストラクター 吉田孝