初心にかえった釣行



 ここのところ「自分」の釣りがなかなかできていなかった。
 初心者のサポートや、魚の薄い渓での釣行で思うように竿を出せず、何だかギクシャクとしていた。
 禁漁まであとわずか。最後の追い込みの時であり、 多少は自分の釣り感を取り戻したい。

 ということで連休中の真っ最中だったが、当会メンバーのなみへい(女子)と入渓した。
 先の理由から「今日は釣りをさせてくれ〜」と、事前になみへいに話し、快諾してくれたので優先的に釣りをさせてもらった。

 車止めに車を置き、そこから1時間半登山道を歩く。ちらほらと紅葉も見られるようになった渓で、苔を愛で、動物の声に耳を傾けながら、標高の高いこの場所の凛とした空気に包まれて歩くのが心地良い。

 1時間半後、入渓点に着いたのでのんびりと準備をする。いつもならこの時期うるさくまとわりついてくるスズメバチの類も少なく、落ち着いて準備をすることができた。
  
 その後釣りを開始したが、調子が悪い時というものは、魚がいないわけではないのに出る魚にアワセられず、ようやく掛かった魚はバレてしまうということになってしまう。

  なみへいに変わってもらうと即座に彼女が釣ったので、 ますます自分の釣りが信用できなくなってしまった。
 
  いつも自分の教室では「集中力が切れたら休憩してリセットしましょう」と説明しているが、今日は全くそんな気になれず、焦る気持ちで毛バリの振り込みは荒くなり、張り出す枝に毛バリを何本も食われるという全く初心者の心持ちになっていた。

 私は1尾も釣れぬままランチタイムとなり、食事をしてコーヒーを淹れる。
 今日の釣りは半ばあきらめ、渓の空気を吸いながら日常生活で溜まり込んだストレスを解放することにした。

 その後帰路についたのだが、あきらめの悪い私は行きに竿を出していなかった場所で竿を出すことにした。

 粘って釣った1尾。



 7寸程のイワナだったが、もの凄く嬉しい。
 このことで、私の中で忘れていた毛バリの釣りを始めた頃の感動と喜びが蘇ってきた。
 「そうだった!この感動を忘れていたのだ!」
  今日はまさにそんな初心者の気持ちを思い出すことのできた1日となった。

  本当に今日は色々な意味で、私自身が「初心にかえる」ことができた。
 この気持ちを思い出したこと。このことは、初心者を相手にしている私のテンカラ教室のあり方にも大いに反映されることだろう。




 そんな一日にお付き合いいただきましたなみへいには感謝。
 いただいたソーセージもたいへん美味しゅうございました(笑)。


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 テンカラインストラクター 吉田孝


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美人沢へ入渓

  内々での通称「美人沢」。



 その名付け親でもある吉田毛鉤会の秋山郷のUさん、そしてとても新人とは思えない釣り感と技量を持つカオりんと、渓の様子を見に行くことにした。

 実はこの渓、今年1度メンバーのK子さんをご案内した時、あまりの魚の薄さに今後を心配していた渓なのだ。  
 奥多摩の渓の中でも、その穏やかで柔らかい雰囲気では飛び抜けた美渓でもあるのだが、とにかく魚が薄い。
 水深も浅く、魚のストックされる量も限られているところに、悲しいかなキープ派の釣り人が入ってしまえばひとたまりもない小渓流だからだ。
 それでもその渓の美しさに魅了され、最低でも年に1度はその渓の顔を見に行きたくなる。



 ということで、そんな渓を見てみたいという吉田毛鉤会新人のカオりんを連れて様子を見に行ってきた。
 事前に「釣りにはならないよ」(魚が薄いので)と説明しておいたが、「渓を楽しみに行けるだけで嬉しいです」とのことだったので了承し入渓となった。



 「渓を楽しむ」ということは、魚を釣るばかりではない。
 魚が沢山釣りたいなら管理釣り場や大量に放流されている場所に行けばよいのだ。
 渓までのアプローチも楽しみ、渓の空気を吸い、渓で食事を食べ、渓でコーヒーを淹れ、タバコをふかし、苔を愛で、そこに生息する生き物に声をかけ、写真を撮り・・・と、そういった多くのことを全身で味わうのが渓を楽しむということである。
 そしてそのひとつとして釣りがあるのだ。



 今日はそういったことが共感できるメンバーとの入渓だったので、私とUさんは竿を一切出すことなく、カオりんの釣り指導をしながら、渓を目一杯楽しませてもらった。
 残念ながら釣果には恵まれなかったが、もう魚がいなくなったのではと思っていたこの渓で、2組のペアリングしている魚も見ることができ、走り去る稚魚の姿も見えたので、ちょっとだけだが安心した次第である。



 ご一緒いただいたUさんとカオりん。 本日はお疲れさまでした。
 今度は紅葉の渓でコーヒーを淹れますので、またよろしくお願いします。



 テンカラを通じ渓を愛でる。

 そういったことから「自然を愛する」気持ちをひとりでも多くのひとに持っていただきたいと常々思っているが、今年も当吉田毛鉤会には女性の入会者が何名かいた。そして自然渓でのデビューもサポートできた。
 メンバーの力を借りて、中学生の女子や男子にも、同じく奥多摩の美しい渓でのデビュー戦を飾ってもらうことができた。
 今月で自然渓は禁漁になってしまうが、今後も女性やお子さんの渓への進出には、惜しまずサポートしていきたいと思っている。



吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 テンカラインストラクター 吉田孝


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増水の後に


(増水後の魚の身体には「礫」でこすれたような細かい傷跡があることが多い)

 昨日はTTCのテンカラ教室の予定だった。
 しかし、奥多摩の支流も豪雨による増水の影響を受け、
とても場内で釣りができる状態ではなく、やむおえず中止となった。
 教室が中止になったと、前日にTTCスタッフより連絡を受けた。

 スケジュールがポッカリあいてしまうのももったいないので、昨日は山梨県下の渓に私と他2人のメンバーと共に入ることにした。

 増水を考慮に入れ、それなりの場所をチョイスしたのだが、早朝車止めに到着するとすでに10台以上の車が止まっていた。
 「うわ〜、こりゃダメだ」
と、その場でひっくり返りそうになる気持ちを抑え、現地で準備をしていたかたと話をすると、ほとんどの人が「きのこ狩り」。
 安心はしたが、それでも何名かは入渓しているのだろうという憶測のもと、私たちも林道へと足を踏み出した。
 
 増水により山肌から浸み出る水が林道に流れを作る。
 その上を歩いたシューズの足跡を見る度に、きのこ狩りのひとであってくれ、先行者ではありませんように・・・と祈るように歩を進めた。
 林道をのんびりと歩いて入渓点に到着。1時間半ほどか。

 もしもの先行者のことを考え、少し時間をおいて釣り上がるように考えたが、今回も熱の上がっている新人のカオりん、竿を出したくてウズウズし、
「ちょっと竿を出してきてよろしいですか」
と聞いてきたので、
「入渓点より少し下り、ゆっくり釣りながら、ここまで上がってきてください」
と伝えて釣りを始めさせた。


(この直後カオりんがイワナを釣るが、撮影する直前、作った生簀から逃げてしまった)

 その間私とくりぼうさんは、荷物を下して一服する。
 黙って川を見つめているだけだが、日常生活で溜まりこんだストレスが、全身から溶け出していく瞬間である。

 川の流れの音以外聞こえてこない、しばしの時間を過ごした後、私は周囲の状況を見回した。
 もちろん水嵩はかなり高い。
 すると対岸の反転流で1尾のイワナが浮いていた。

 ポジションを確認し、毛バリを投げてみる。
 1投、2投は距離が少々とどかなかった。
 3投目、フィ―ディングのスポットにうまく入ったと思ったら、案の定魚が動き毛バリをくわえた。
 増水時の「礫」で傷ついた身体。
 頑張って生きているんだなぁと思いつつ、私の毛バリに食いついてくれたことに感謝しリリースした。

 通常この渓はヤマメが中心だが(アマゴもわずかばかりいる)、水嵩も高く、反転流しか釣りにならないような状況になると勢力が逆転し、イワナが先に毛バリをくわえてくる。
 私、同行のくりぼうさん、カオりんともイワナばかりで、他の種類は途中くりぼうさんが1尾だけヤマメ・・・と思ったがアマゴを釣ったのみであった。


(くろぼうさんがここで疑惑のヤマメアマゴを釣った)

 平水時なら簡単に対岸に渡渉できる場所も思うようにならず、何度か巻きながら遡行したが、入渓前に心配していた増水や先行者
の影響も少なく、楽しく釣りができたことに感謝である。

 禁漁まで残すところ後少し。
 頑張って時間を作り、もう後何回かは入渓したいと思っている。

 ご一緒いただいたくりぼうさん、カオりん。ありがとうございました。
 また楽しく遊びましょう!!


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週末はシャロムの森へ



 ここ何ヶ月か、教室やガイドや取材の釣行が続き、全く自分の釣りができていなかった。
 自分自身の釣りがガタガタになりつつあったのと、このまま禁漁にでも突入したらまた半年悶々と過ごさねばならなくなることは明白だったため、放流ナシ、貸切で落ち着いて釣りができ、しかもスレっからしの魚たちのいる「シャロムの森」に出かけてきた。

 先行者を回避するには早朝入渓や前日から前のりしなければならず、生簀のように大量の魚を放流してある場所では自主トレにならない。
 それなりに難易度が高く、しかも雰囲気のある場所ということで時々この場所にお邪魔している。

 入渓前、暫くぶりにお会いしたオーナーとしばし談笑する。
 その後入渓場所を決め、午前9時半に釣りを開始した。
 開始から1時間はその日の様子を見るために、パイロット毛バリを使用して水面直下から水中深くまで探っていく。
 ほとんど反応のないまま時間が過ぎてゆく。

 そろそろ大きく釣り方を変えようかと思っていた時、表層で1尾のヤマメが釣れた。
 あれだけ水中を探って反応がなかったので、飛翔する昆虫類は少なかったものの、ドライ系の毛バリに結び変えて釣りを再開した。
 できるだけドラグを回避したいためハリスも2メートル以上と長くとる。

 これが読み通りとなり、カディス、ブナムシプカプカ、パラシュートと、浮かせる毛バリへの好反応が続いた。




 午前中の釣りを終え、食事でもしようかと思ったところにパラパラと雨。
 一度場所を移動し、そこから少しだけ釣りをした。
 ここでもパラシュートに反応が良かったのだが、止みそうもない雨となったため、午後1時半にシャロムを後にした。
 午後の釣りは1時間ほどで切り上げたが、久しぶりにたったひとりで渓を堪能することができた。
 疑問だった問題もいくつかは解決することができた。




 自分の釣りに迷いが出た時に、落ち着いて釣りができるこういった場所は本当にありがたい。
 ひとりになりたくなった時には、また出かけようと思っている。

●週末の土曜日(12日)はテンカラ教室の開催日です。
ご予約いただいたみなさま、当日はよろしくお願いいたします。


教室のご案内はコチラ←クリック


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 テンカラインストラクター 吉田孝


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ミッションは「吉田毛鉤会のテンカラ女子2名に在来イワナを」

 吉田毛鉤会には今年になって2名の女子が入会した。
 ひとりはなみへい姐さん、もうひとりはカオリンである。
 入会したキッカケも釣りの経歴も違うふたりだが、ふたりともテンカラにかける情熱がとんでもないのである。
 その情熱を神様もご覧になっていたのか、ふたりには在来(天然)のヤマメを授けていただくことができた。

なみへい姐さんのデビュー
http://yoshidakebari.jugem.jp/?eid=1738
カオリンのデビューhttp://yoshidakebari.jugem.jp/?eid=1761


(朝日の当る林道)
 
 さてこのふたり、在来ヤマメのミッションをクリアーしたかと思ったら、次は在来のイワナが釣りたいといいだした。
 で、スケジュール調整をして、本日2名同時にミッションをクリアーしようと計画をした。
 スケジュール調整をしたのはいいのだが、実は昨日と今日で私の車が車検に入ってしまい足がない。
 すると当会メンバーのひとりのナベちゃんが、「自分がお迎えに上がります」と、ご協力いただけることになったのである。


(朝日を撮影するふたり)

 今回の場所はイワナを釣らせるのが目的であるため、その人数を受け入れるだけのキャパシティのある山岳渓流を熟考の上決定した。
 朝5時半に車止めに到着すると、すでに先行者の車が。
 ガイド役の私としては胃が痛くなる思いである。
 林道を歩きながら先行者を探したが見つからなかった。
 後でわかったのだが、マウンテンバイクを使い上流部までいったようだ。
 自転車はともかく、最近は認められていない場所にバイクで入る奴も時々見かけることがある。
 そういった場所が法的にどうなっているかは知らぬが、2本の足が泣くぞ。


(やったぜ!!)

 さて、気を取り直してミッションの話に戻る。
 ナベちゃんには運転だけでなく、カオリンの釣りのアドバイスも担当してもらった。
 先日の沢テンデビュー戦で、まぁ魚がいればなんとか結果を出せるだろうと思っていたが、やはり早々に結果を出してくれた。
 これで本日のミッションは50%クリアーしたことになった。


(なみへい姐さんの番)

 で、お次はなみへい姐さんの番だ。
 実はこの少し前、なみへい姐さんは魚を掛けバラシしていた。
 そんなこともあり、後輩に先を越された姐さんだったが、その後ろで竿を出していたナベちゃんが、ケツから釣りやがったのである。
「プレッシャーかけちゃった〜」「ヤバいヤバい」と早々に竿をたたむナベちゃん。
それでも元より実力はあるなみへい姐さんは、無事ミッションをクリアーすることができた。


(オイッ!)


(超嬉しそうななみへ姐さん・顔が見えないのに笑っているのがわかる写真です)
 
 ミッションは完了。
 私を除く3名が魚を釣ったところで上流部へ移動しようとしばらく歩くと、先の自転車を発見する。
 そこから先は先行者アリということなので、1度大きく後退することにした。
 後退しながら一定区間を置いて、ひとりずつ川に下りてもらい、待ち合わせ場所を決めておいて時間になったら合流することにした。

 ふたりには、初入渓在来ヤマメの時には手取り足取りという感じだったが、ステップ・バイ・ステップで少しでも自分でできることを憶えてもらうため、渓でひとりにする時間を作ってみた。
 たったひとり渓に立つと心細くなるということを感じてもらいたかった。
 この心細さが、裏を返せば安心安全で慎重な遡行をすることにつながる。
 一歩間違えば生命の危険を及ぼすような渓では、慎重にということが一番大事なことになる。
 とはいえ安全ばかりでは自分の技術の伸びというものがない。
 この辺りは多くの経験者と同行しつつ、頭だけでなく身体で憶えていくことも重要になる。

 その後の私は先に合流地点まで下りて、そこで食事の支度をして待つことにした。
 支度をしている最中に飛来する大型のアブやスズメバチがうっとおしい。


(ミッションをクリアーしたみなさんには私からランチの提供を)

 ニコニコで待ち合わせ場所にあらわれた3名に、今日も渓のツナそうめんを振る舞った。
 ひとりの釣行も緊張感があり、嫌いではないが、こうやって和気藹々とランチを楽しめる釣行も素敵だ。


(なみへい姐さんもやってみたいというので)

 ランチの後は、ド定番となった携帯用エスプレッソマシーンとフォームドミルクで作ったカプチーノを振る舞った。
 この美味しさは尋常ではないことがご理解いただけたのではなかろうか。

 食事の後は片付けをして、折しも吹いてきた冷たい風や、積乱雲も確認できたこともあり、そそくさと車止めへの道を下った。

 とここまでは普通の釣行記だが、ここから先にネタがある。
 
 林道を下っていたなみへい姐さんから、あまりにも暑いので「親方〜、水浴びしちゃってもいいですか」との声が。
 すかさずOKをだすと、この写真の通りである。


(おととと)


(ザブ〜ン!!)


(バカふたり・よい子はマネしないでね)

 私とカオリンは冷静に笑いながら死んでくれとふたりをみまもる。

 いや〜しかし楽しい1日だった。
 帰りには美味しいワインを仕入れることもできたし、無事ミッションもコンプリートしたし、満足至極である

 ガイド釣行は竿をださなくてもまた楽し!!
 ということでサポーターとして頑張った1日でした。

 おめでとう、なみへい&カオリン。
 吉田毛鉤会テンカラ女子の面目躍如!!
 ナベちゃん、色々とごくろうさまでした。
 また楽しく遊びましょう!!

 そしてテンカラをやってみたいけど、周囲に誰も知っているひとがいないと思う女子!
 私と吉田毛鉤会のメンバーが責任を持って面倒をみますので、先輩女子に続け!!というところです(笑)。


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 テンカラインストラクター 吉田孝



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「テンカラ」最高の1日

 とあるキッカケで当吉田毛鉤会に入会したひとりの女性がいた。
 この女性を「カオリン」と呼ばせていただく。

 釣りをやったことがなく、やってみたくて道具一式を揃えた。
 元より低山ハイクをやっていたことがあり、選んだ釣りが「テンカラ」だった。

 自分ひとりで挑戦してみようと、電車に乗って奥多摩へ。
 この、どういうわけか奥多摩にいったというのが運のつき。
 ネットで調べたわけでもないのに、幸か不幸かTTC(TOKYOトラウトカントリー)を知り、吉田毛鉤会へ入ることになった。

 釣りをやってみたくて、しかもテンカラをやってみたくて、TTCで初めて挑戦したのが5月。
 何もわからないので、TTCの毛鉤研究会に参加した6月。
 何の因果か吉田毛鉤会に入り、釣りより先に飲み会に参加した7月。
 そしてこの日に初めての自然渓、しかも沢といわれる小渓流に入ることとなった。


(とくさん撮影)

 
物欲女王でもあるカオリンは、先ずは一式道具を揃えるところから入ったのだが(このあたりは当会のメンバーとしての素質はバッチリである。毛バリ巻きにハマり、先日は一気に300本のハリをオーダーしたそう)、その沢でのテンカラをやりたいというもの凄い情熱を感じた私は、ガイド役を引き受けることにした。

 なぜかといえば、道具と情熱があれば後は技術を教えるだけだからである。
 渓での釣りは車横付けで簡単に入れる釣り場とは違い、やはりそれなりの道具や装備というものが必要になってくる。
 「あれがありませんでした」では済まない世界であり、忘れ物をしても簡単に取りにいくことができない。
 だから道具や装備がひと通り揃っていなければ、安易に連れていくことのできない世界である。

 ということで、この日は当会メンバーのとくじろうカメラマンもサポートに付き、勝手知ったる奥多摩の渓に入ることにした。

 


 台風による大雨の影響で水嵩がある。

 釣り始めは遡行もままならないような状態であったが、カオリンは渓をまともに歩くのも初めてということもあり、一挙手一投足にアドバイスをしながら遡行させる。

 年齢的にはこのくらいの娘がいても全くおかしくはない私。
 わが娘に教えるかのように、期待と心配の気持ちを持ちつつ注意をしながら釣りを開始した。

 
水が高い(水嵩がある)状態であり、テンカラも今日で4回目だし、正直水の状況も良くないこともあって(増水でいつものポイントが潰れている)、私的には内心今日は魚に出合うことはムリかと思いながらも釣りをしてもらった。

 それでもせっかくの初入渓でもあり、魚が釣れなければ美しい渓歩きと、美味しい渓メシで満足してもらえればと思っていた。


(とくさん撮影)

 さて、開始当初のカオリンだが、藪でのお約束、魚ではなく木や枝に毛バリを食われるを連発していた。
 まぁこれは藪沢初心者の想定内のことである。
 毛バリを食われても、本人は毛バリ巻きも大好きなので、自分で巻いた毛バリの弾数はけっこう用意していた。
 女の子でもこういった場所にきたら、自分のことは自分で責任を持つというその心がけは実に良い。

 
キャステイングも最初は仁王立ちで、イマイチ思うところに毛バリが振り込めずにもどかしい思いをしていたようだ。
 そこで毛バリを振り込みやすい重さのものに変え、前傾姿勢、しかも低い位置からのキャステイングをやらせてみる。
 周囲の枝に毛バリを食われないよう気を使わせながらのキャストもさせてみた。

 
するとこのカオリン、突然利き手と反対の左手に竿を持ち、右手と同様に振り込むではないか。
 私は左右両手でキャスティングができるので、その有利さから教室でも教えているが、それを普通に再現していた。

 
ん〜、もしかするともしかするかも。
 ポイントが少なくなるほど水量の増えたこの渓で、ちょっとだけ希望の光が閃いた瞬間であった。


(とくさん撮影)

 釣り方について私も色々とアドバイスをしたが、教える度になにかを悟ったように、するすると理解してみるみる渓での釣りに適応していく。
 その場所場所に対応できるキャステイングを体得し(テンカラミディを使ってました)、みごとにストーキング→アプローチ→ポジショニングをして、魚を狙っていた。

 これには私もとくさんもビックリで、もしかするともしかするかもと、今後の展開を2人でジックリと見守ることにした。

 その後、毛バリを振り込む位置、流す距離、流す水深等もアドバイスをしていると、またひとつ驚くべきことを発見した。
 彼女、実に目がイイのだ。
 私が偏光グラスをかけて魚を探していると、その隣で裸眼で魚を見つけてその動きも把握している。
 これはテンカラ師にとって大いなるアドバンテージとなる。
 
 そうこうしながら釣りを続けていくと、次第に見える魚がポツポツと現れ、チャンスが訪れたのである。


(とくさん撮影)

 
やりやがった。

 ついにやりやがったのである。

 後での話だが、小さな魚が対岸に見えたので、それを狙ってキャストをしたとのこと。
 すると突然流芯の方向から別の良型の魚が飛び出してきて、「カオリン作のうさぎ胴キジ蓑毛#16沈み花笠」の毛バリに食いついたそうだ。

 私も叫んでいたが、同行のとくさんの「早く上げて―ッ!!」という絶叫が聞こえる。
 その大興奮の一場面、撮影していたとくさんの絶叫と共に、私の頭の中からは生涯消えることのないものになった。

 無事ランディングネットに納まったのは、この渓では良型の22センチ、婚姻色が出ているかのような美麗なヤマメであった。
 私ととくさんは2人大声を上げて喜んでしまった。
 もちろん当の本人はこの瞬間からしばらくの間心臓はバクバクし、指の震えが止まらなかったとのこと。

 カメラ(写真撮影)も趣味だというカオリンなので、魚の撮影方法もアドバイスし、自分で釣った魚を自分で撮影していた。
 魚の撮影方法をレクチャーした後、私も竿を出させていただき、ここは師匠の面目躍如とばかりに一尾引っぱり出した(笑)。
 


 テンカラを始めて4回目、自然渓、しかも激戦区の奥多摩の沢でこれほど立派な魚を釣り上げたひとは、私の知っている範囲では未だかつていない。 
 
 切望していた渓での釣り。
 自分で巻いた毛バリで、しかも自然渓で、放流のない在来魚しかいない場所で、本当に綺麗なヤマメを釣ったカオリンの喜びは計り知ることはできない。

 後で教えてくれたのだが、カメラのレンズキャップとペットボトルのキャップを間違えて装着しそうになったといっていたので、その興奮した状態がうかがえる。
 


 ミッションを達成したその後は、お待ちかねの渓でのランチタイムとなった。

 ニコニコのカオリンにご褒美とばかりに「渓そうめんツナ味つけ汁」と、モチロンこれは外せない、カプチーノを振る舞った。

 自分で竿も出さず、撮影に徹底してくれたとくさんに感謝するとともに、2人でカオリンの偉業を称えた。

 私が持参した荷物は12キロは超えていたが(ご褒美のため)、この重さが仇にはならなかった。







 その後退渓しTTCに立ち寄ったのだが、ここではノンアルコールビールで3人で乾杯した。
 

(笑いが止まりません)



 と・・・ここで終わりではなく、帰路、我が城下のJSY狭山ヶ丘店に寄り、カオリンはご所望だった「剣羽根」を購入していた。

 後にいただいたメールで「最高の一日でした!!」とのこと。

 初入渓、初在来(天然)魚、自分で巻いた毛バリ、そして好きな撮影、美味しい渓そうめんと渓カプチーノ。
 おまけの剣羽根入手まで。

 これを最高の1日といわずしてなんと表現すればよいのでしょう。

 とくさん、撮影班ありがとうございました。

 そしてカオリン、感動をありがとう!!


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 テンカラインストラクター 吉田孝



⇓とくさんのブログにも⇓ 
http://d.hatena.ne.jp/toku-jiro/20150719#p1


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雨中のテンカラ

 梅雨入りしていることもあり、ここ関東地方では雨の日が多くなっている。



(雨と苔と藪、こういった釣り場が大好きだ)

 昨日は久しぶりに平日の休みがとれたこともあり、当吉田毛鉤会メンバーのUさんと、「雨による増水や、林道や登山道の崩れの少ない場所」を考え入渓してきた。

 私がいつも入っている奥多摩の渓(源流域)は、岩盤の地質の場所が多く、落石の危険はつきものだが、雨の影響は増水以外感じることがない。
 昨日入った場所は山肌が土と落ち葉のところばかりで、降雨によって岸際に土が流れに入ってくることになる。
 入渓時はほとんど濁りもなく、何度か魚の反応を見たのだが(フッキングしなかった)、その後徐々に濁りがキツくなり、苦戦することとなった。

 ただ、どうにか2人とも少ないながらも魚の顔を拝むことができたし、「雨の渓もまた風情があってよし」ということもあらためて実感できた。 
 どしゃぶりに近いこともあり、お湯を沸かしてコーヒーを入れたり、写真をゆっくり撮影することができないのが少々残念ではあるが。



(放流のない場所なので、魚は撮影の後100%リリースで)

 以前は濁りの川での釣りをやったこともあり、それに対応できる(と思う)毛バリもずいぶんと用意してはいたのだが、ここ何年かの奥多摩通いですっかり濁りの釣りのことを忘れていた。
 今回の反省、というか今後の対策も含め、こういった状況に対応できる毛バリもあらためて考え直していくつもりである。
 今までの経験からの濁り対策の毛バリについては、毛バリ研究会にて詳しくご紹介したいと思っている。

 今日は恒例になりつつある、上半期の報告を兼ねた「吉田毛鉤会ハーフタイム飲み会」を夜の都心で開催する。
 各方面に超の付くマニアックなメンバーたちとのこの談笑が実に楽しく、楽しいだけでなく実際の釣りに反映される情報も満載なこの飲み会。



(雨に濡れ、哀愁漂う男の背中になってしまった)

 さてさて今宵はどんなことになるのか、今からワクワクが止まらない。


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 テンカラインストラクター 吉田孝


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恵みの雨とはならず、水温低下で苦戦する



 今日は吉田毛鉤会のメンバーと少々標高の高い山岳渓流に入渓した。

 元々水量の少ない川なので、雨による魚の動きを期待していったのだが、やはり水源標高が高いせいもあり、昼近くになっても水温は9度という状況に苦戦を強いられることになった。



 2人ともどうにか魚の顔は拝めたが、よく釣れるということにはならず。



 それでも高原のような清々しい空気の中、イワナ釣りを楽しむことができたので、今日も満足のいく釣行となった。

 苦しい状況の中、釣れてくれたイワナにはお礼をいいつつ丁寧にリリースした。

 釣れても釣れなくても、標高の高い渓流は、そこに立っているだけでも本当に気持ちが良い。

 さて、次はいつにしようか。。。


吉田孝 吉田毛鉤会代表 テンカラインストラクター 吉田孝


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新メンバー、奥多摩在来美魚を相手にデビュー戦を飾る



 毎年じわじわと増えつつある吉田毛鉤会のメンバー。
 今回は解禁から奥多摩の渓(沢)で在来美魚を釣りたいと切望していた「なみへい」を連れての入渓となった。



 チーム内のHNは「なみへい」だが、女子である。
 このなみへい、カンツリでのテンカラ歴は数年あるが、自然渓での釣りはほとんどやったことがない。
 しかし、渓流魚のみならず、苔も好きだということもあり、以前から自然渓、しかも里川や一般渓流ではなく、雰囲気のある沢への入渓をしてみたい思っていたとのことだった。



 ただ、ひとりで入れる術もなく、案内できるメンバーもいる当会への入会となり、本日初めて奥多摩の沢へ入ることになった。
 釣技に関しては全く問題なく、開始からじっくりと見ていたが、沈めた毛バリへの魚のアタリの取り方も充分に理解していた。
 細かなポイントへのキャスティングも問題ない、というより藪で普通にキャスティングができるので上手な部類に入るだろう。



 小渓流での釣り方には慣れていなかったため、ポイント、流し方、そして最重要なアプローチと立ち位置の取り方をアドバイスする。
 ほどなく1尾掛け、ネットインする直前にバレてしまうが、直後に1尾見事に釣り上げ、奥多摩沢テンデビューを無事飾ることができた。
 


 私が思う「導入」とは、厳しいことを言ってそのひとのやる気を失くすことではない。
 なぜなら私が楽しんでいる「テンカラ」は、仕事としてやっているわけではないからで、(私の場合取材については仕事になるが、それと一般的な趣味のテンカラとは置かれている位置が違う)できないからといって無理強いするようなものではないと思っていて、要するに、楽しく、しかも安全な釣行が個人でもできるようになるまでのサポートをすることだと思っている。



 ただ、沢でのテンカラは、その場所柄、誰でも連れていくというわけにはいかない。
 時にはパートナーの命を預かるような場面にも出くわすことがあるため、お互いの信頼関係を築いていないと気持ちよく入渓などできないのである。

 今日はそんなトレーニングも含め、実に楽しい釣行となった。
 楽しさを倍増し、もうすぐにでも次の入渓を・・・と思わせるよう、美味しい食事やエスプレッソも提供した。

 なみへい、本日はお疲れさまでした。
 魚の薄い、激戦区の奥多摩のスレッカラシのヤマメを何尾か釣ることができたので、あなたの実力は本物です。
 山歩きと沢歩きのスキルをこれから徐々に上げていき、ハマった写真撮影と共に、これからも存分に沢テンを楽しんでください。


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 テンカラインストラクター 吉田孝


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日帰り釣行でも



 今期の私の釣りはガタガタで、解禁当初を除き、何度か「ボ」を喰らっていた。
 理由のひとつは奥多摩の日原川水系最大の支流の小川谷が、林道改修工事のため入渓できなくなっているので、思うように釣り場が選べないことがある。



 本当に釣れない釣行が続いてガタガタになっていたのだが、先週千葉のGさんにご案内いただいた場所で、多少息を吹き返した感じだった。



 そして今日は、横浜のNさんにご案内いただいた、また別の日帰り圏内の釣り場で、完全復活を果たした。



 私は一応それなりにテンカラをやっているので、魚がいる場所にさえいけば、なんとか仕事はできる(と思っている)。
 取材や教室では、そんな力量をフルに発揮することになるのだが、今日は魚のいる場所にご案内いただいたので、大好きな藪沢でのゆる〜い釣りを楽しんできた。


(双翅目が多く飛んでいたので、一日中ハチガシラの毛バリで)

 ゆる〜いといっても釣りがユルイわけではなく、蝉の鳴き声を聞きながら、爽やかな高原地帯を流れる森林で釣りをしているというその行為が実にゆったりとした気持ちになり、いつも以上に渓を堪能することができた。



 交互に釣り上がり、その細い水の流れの随所随所からイワナが顔をだす。
 もちろん放流魚のいない渓でもあり、美しく可愛らしい在来のイワナは100%リリースだ。
 1000メートルから1650メートルまで釣り上がったが、標高が上がるごとに魚のサイズがよくなるという渓で、最後の1尾はNさんの上げた8寸のイワナだった。


(清冽な水と苔)

 家族や仕事の関係で、取材以外で泊りの釣行は皆無といっていい私でも、このような素敵な場所にいき、美しい在来魚と会い、日帰りで自宅に戻ることができることは、本当に幸せであるとあらためて思った。


(Nさんの釣った8寸のイワナ)

 Nさん、本日はありがとうございました。
 もちろん、今日私の毛バリをくわえてくれたイワナにも感謝している。
 そしてNさん、3年越しで、ようやっと私の前で魚を釣り上げて見せてくれたことは黙っておきます(笑)。


吉田毛鉤 吉田毛鉤会代表 テンカラインストラクター 吉田孝



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