毛バリというものを初めて自分で巻いたのが、今から40年以上前のことになる。
細かい仕事やもの作りの好きな私にピッタリとハマり、そこからは毎週末毛バリを巻き続けた。
気づけば朝を迎えることを繰り返し、釣りに出かける機会を逃して、とうとう2年間釣りにいかなかった。
その位毛バリ巻きにハマった私なので、現在は仕事にも繋がり、ひたすら巻いている。
「これでいいや」
「こんな材料でも大丈夫」
「毛バリなんか・・・」
という考えは私の気持ちの中にはなく、答えを見つけるための過程も楽しむ私にとって「追求」というワードが常に頭の中にある。
ハリならば、形状による掛かりとバレの関係、ハリの重さとマテリアルによる沈下速度の関係、ウエイトのあるなし、ウイングやテール、ポスト等の付属物による着水姿勢等々、毛バリを巻きながら永遠の課題を楽しんでいる。
毛バリは使い手によっても、ラインやハリスへのテンションのかけ方やスラックの出し方が違うため、マイクロスケールで毛バリの重さを量っても、みんながみんな同じような釣り方にはならない。
販売用の毛バリについては、ある程度グローバルスタンダードのような形を取るが、結局は自分で使いやすいものを、自分で作らないと、思ったような釣りができないというのが本音である。
次回の釣りは、山梨県のイワナの渓に行く予定だ。
魚は小ぶりなものが多いため、少し小さめの14番を使って毛バリを巻いた。
それともうひとつ、寒い時期の定番、ビーズヘッドの毛バリも巻いた。
ハリの種類に頓着しない方も多いが、先ほどの話から、私は危険なハリ中毒患者なので、新しく発売になったハリや、気になるハリはとりあえず買って使ってみている。
先にも書いたが、沈下速度、姿勢、ハリ掛かり、強度、バレやすさ(基本キャッチ&リリースなのでバーブレスしか使わない)、他にも色々と検証し、自分の釣り方にピッタリな物を求めている。
使ってみて気に入らないハリは1~2本巻いたら次は巻かないため、選択肢から漏れたハリのケースが山のように溜まっていく。
吉田毛鉤のフラッグシップモデルは『現代版ハチガシラ』と名付けた、ハエ目の昆虫たちをモデルにして作ったものだ。
バージョンは色々とあるが、大きな特徴は複眼をイメージした目玉となっている。
こちらの毛バリは生命感満載になるよう、腹節もウイングも取り付けてみた。
精緻な毛バリと釣果は比例しないのは経験上良く分かっているが、私の場合は、雑な作りの毛バリをハリスに結ぶと、渓流に立っていても、テンションがダダ下がりしてしまうのだ。
教室に出てくれた方が、一所懸命に巻いた毛バリは、その完成度に関係なく、釣りたい思いが込められているため雑な毛バリではない。
気持ちを込めて一所懸命に巻いた毛バリで、生徒さんが魚を釣った時の感動の表情は、いつ見ても本当にこちらも嬉しくなってしまう。
もとより毛バリを巻くことも、毛バリ釣りの楽しさの半分は占めていると思っている私。
想いを込めて、丁寧にウキウキワクワク楽しみながら、自分の手の中で生まれた毛バリで1尾の渓流魚を釣ることが、私にとって何より嬉しいことなのだ。
吉田毛鉤 テンカラインストラクター 吉田孝